20曲目 3曲目 ※

 和哉が多喜と話して数日後、いつものレッスン後だった。いつものようにメンバーがレッスンをしている中、別部屋に籠っていた多喜は新曲が完成したと休憩していたメンバーの元に現れた。そして。田口と共にメンバーに歌詞カードを配ったのだ。

「新曲が完成したよ。今回の新曲は【不器用きんぐ】、センターは和哉君に頼みます」

 歌詞カードを読んで和哉は多喜を見た。多喜は任せたぞと言わんばかりに微笑んだ。ようやくプロデューサ―の意図を理解した和哉は頑張れよと両隣から肩を叩く育と蓮太郎を交互に見て頷いた。掴んだチャンスを無駄にしないと誓ったのだ。



 帰り道、育は歌詞カードを読みながら和哉に向かって微笑んだ。

「和哉らしい歌じゃん!」

「俺もそう思う」

 蓮太郎も笑顔で頷いた。そんな二人を見て、和哉は深呼吸した。ファンの子に素直になる前にまずはこの二人に素直になりたい、そう思ったのだ。

「育、蓮、その」

 立ち止まって何か言いたそうな和哉に育と蓮太郎は顔を見合わせた。

「いつも、俺なんかと仲良くしてくれてマジありがとう、これからも仲良くしてほしい。こんな俺だけど」

 和哉は照れたように呟いた。

「そんなの当たり前じゃん!友達だろ!」

「そうだよ、何言ってるんだよ」

 満面の笑みの育と涙目の蓮太郎は和哉に駆け寄り、センターが決まった時のように左右で挟んで肩を叩いた。

「俺、頑張るわ」

「おうよ!俺らも周りで全力ダンスするからな!」

「センターより目立たないようにね!」

 いたずらっ子のように笑う二人を見て、和哉はスマホを取り出し、内カメラにした。

「写真と撮ろうぜ」

「和哉が言うなんて珍しい、蓮、左右シンメでポーズ合わせようよ!」

「和哉くんがセンターだからね。俺らでハート作る?」

 内カメラに映った嬉しそうな自分を見て、和哉は心からスターラビットになろうと決めた過去の自分に感謝した。


【作者コメント】

 こんにちは。ちょっと長くなりそうだったので【チャンス同盟】と同じ方法で18時15分に【不器用きんぐ】の歌詞を投稿いたします。

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