事件です。
第6話
■ 事件です。
由佳の変わり果てた様子が気になりつつも、やはり一日働いた疲労に空腹がおいつかない。
私は和風ハンバーグ定食を頼み、加納くんはスパゲティナポリタン、由佳はサラダバーとドリンクバーだけを注文した。
「由佳、痩せたんじゃない?ちゃんと食べてる?」と流石に心配になって聞くと
由佳は俯きながらポロポロと涙を流しだした。
え!?私何か悪いこと言った!?
もしかして由佳は何か悪い病気なんじゃ!!
由佳の隣に座った加納くんが由佳のすっかりやせ細った背中に手を回し必死に撫でている。
「実は由佳は……」
真相を語り始めてくれたのは肝心の本人ではなく加納くんだった。
加納くんの話を聞いて私は目を見る見る開いていった。運ばれてきた和風ハンバーグ定食のフォークとナイフが手からすり抜け、カランと乾いた音がした。漂ってくる肉汁の匂いを感じることができず、周りの客たちの声も遠のいていった。
「レイプされた!!?」
「しー!声が大きい!」と加納くんは唇に人差し指を置き、辺りをキョロキョロ。私も思わずキョロキョロしたけれど、この時間帯一人客は少なく客の殆どがツレとの会話で忙しそうで私の言葉は耳に入ってないようだった。そこのところにちょっとほっ。
由佳は加納くんに背中を撫でさすられながら泣きじゃくっていて、私は次に掛けるべき言葉を必死に頭の中で検索していたけれど、話はそこで終わりじゃなかった。
由佳は妊娠していた。
「せ、生理が来なくてこないだ病院いったの。そしたら妊娠してるのが分かって……」
待って……話がついてこない。
「でもそれは加納くんの子供の可能性だってあるわけだよね……」思わず眉を寄せて加納くんを見ると
「――――分からない」と加納くんは項垂れた。「だって俺……由佳と結婚するまで割と気を付けてた方だし」
何てこと……
私の知らない所で由佳がそんな目に遭ってたなんて……
知らなかったとは言え私無神経過ぎた。
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