第68話

新しい式神はカヅコの声を吸い込むとまた素早く戻っていった。最初の式神には不可思議な幾何学模様が描かれている。カヅコは帯に挟んで夕食の支度を始めた。顔が緩んでいる。


 今年は不作でも凶作でもない。暮らし向きはさほど良くない。けれども家族には恵まれているし、カヅコには不満はなかった。


 この時からカヅコとチヒロの少し変わった文通が始まった。


 式神は声や音だけでなく、映像も伝えたし、物の出し入れも出来た。郵便よりも遥かに便利だ。

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