第56話
「…そうだ。母さん、夢京に帰ったら良い生地をカヅコちゃんに送ろうよ」
チヒロが言った。ヒロミは口の中にあった飯をよく噛んで、ゆっくりと飲み込み、茶をすすった。チヒロが待ってるとヒロミは言った、
「その親切が仇となるかもね」
「え?」
チヒロが驚く。シズヤが頷く。ミユキは考え込むように顎を指で押さえた。ヒロミは言った、
「カヅコちゃんは矜持が高いかもしれない」
「矜持って何?」
チヒロが聞き返すと、ヒロミは
「自分を誇ること。他人に無闇に甘えないこと」
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