第49話

居住地を過ぎると果樹園と野菜畑と田んぼが広がる。キスケとカヅコは何処が誰の田畑か慣れた様子で教える。チヒロは不思議な顔をして、

「よく覚えられるね。それに何処も広い」

 キスケは、

「まあ、生まれた時から住んでるからね」

カヅコは、

「広くないよ。皆、そんなに贅沢してないし」

 チヒロは、

「え?」

 と、驚いた。キスケもカヅコも驚いた。チヒロは、

「だって屋敷が何軒も建つよ」

 言われてみれば確かにそうだ。カヅコは息を飲んだ。だが、キスケは、

「農地はね、作物を一所懸命に育てて売って納税してやっと生活が出来るんだ」

 チヒロは腑に落ちない。こんな広い土地を耕す農家が贅沢出来ないのは不思議だ。

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