第53話
見た目から立派だと思ってたけれど、広い庭もやはりきれいに手入れをされていて立派な松の木や椿の垣根や小さい池があり
その奥に木造と思われる家がそびえ立っていた。
昔ながらの木の格子の玄関口。
何だか懐かしい。
私の祖母の家もこんな感じだった。
けれど保護者が居ないこの家にわけも分からない人間を入れる女の子がちょっと心配になった。
いや、身分や素性はちゃんとしてるけどね。女の子から見たら不審者極まりない。
女の子は「
その紀子ちゃんに促されるまま、私たちはこれまた立派な茶の間に通された。庭が見渡される縁側の部屋だ。
紀子ちゃんは冷たい麦茶と一緒に一枚の写真を持ってきた。
「どうぞ」と丁寧な手つきで出された麦茶は散々この付近で聞き込み(?)をしていた私たちにはありがたかった。
こんな丁寧な扱いを受けたのは初めてだ。
一気に半分程飲んだ所を見計らってか、紀子ちゃんは一枚の古びた写真を私たちの手元におずおずと差し出してきた。
その写真はモノクロで和服を着た一人の女の人が映りこんでいた―――
けれど、私たちは思わず目を開き塩原と顔を合わせた。
何故なら、その写真の女の人は私とそっくりだったから。
「マジかよ。前川そっくり」塩原が目をまばたいた。
「お祖母ちゃんの箪笥から出てきたの。夏祭りに着ていく浴衣を探してて、そしたらこれが隠されてて……いけないと思いつつも思わず持ってきちゃって…
だって…隠しておきたいのに、捨てられないって感じで…どうしても気になって…」
紀子ちゃんは酷くいけないことをした、という感じで肩を縮める。
紀子ちゃんの悪事(?)とはいささか大げさかもしれない。たかが写真一枚だ。
けれどこの写真の女性は―――やはり私とうり二つだった。
モノクロだから色は分からないけれど格子柄の着物に身を包み、きっちりと夜会まきの髪型。椅子に座った彼女はピンと背筋をのばして膝の上で上品に手を重ねていた。
口元には淡い微笑。
「あの………この方は……」
声が震えた。
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