第51話
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次の休み。
新しい新店舗の準備は着々と進んでいる。
当時の写真を見つける為、私は”悲恋坂”周辺の家を手当たり次第当たろうと思っていた。
けれど
「俺も行くよ。徒歩だと限界があるだろ。俺車出すし」
と、塩原が付き合ってくれることになった。
確かに車を持っていない私に徒歩での調査は限界がある。
正直、休みの日に恋人でもない男女が車で二人っきりと言うのはどうかと思ったけれど、これはあくまで仕事。
と割り切って塩原の厚意に甘えることに。
塩原の車は(始めて見るけど)ミニバンで車内は結構広かった。敦子の旦那さんのたっかそうな外車とは違って国産のどこでも走ってるものだけど。
広い車内はきれいに片付いていて、こざっぱりとしている。
塩原の運転も上手だし。
塩原の性格そのものを語っているみたい。
つまり、背伸びをせず身丈にあったもの、そして真面目でも不真面目でもない、ちょうどいい感じ、って言った所だ。
まずは”悲恋坂”近くのいかにも古そうな民家を当たることに決めた。
バスが通る道は片道一車線、それなりに分かりやすい道だった。けれど少し脇道に入ったら狭い山道がうねうねと続いていて、塩原がいてくれて良かった、と改めて実感。
この付近にカフェを建てること、その際に古い写真を集めることを訪ねた人々に説明すると、快く昔の写真をひっぱり出してくれた人もいるし、中には不信感を露わにして門前払いと言うのもあった。
意外と難航している。
「この坂を上ると、大きな家があるみたいだな」
古い地図を手に塩原が言った。
丁度”悲恋坂”の折り返し地点だ。
その地図を覗き込むと確かにこの辺一帯ではかなり大きな……お屋敷と言う感じだ。
区画整理とかで今のマップアプリは使い物にならないから、こうやって古い地図を頼るしかできないのがもどかしい。
「今はあるかどうか分からないけれど…」
そうなのだ。
図書館でコピーした古い地図は現存しているのもあるけれど、その多くが過疎化に伴い取り壊されていた。
車を走らせること10分。
「あ!あった!」
坂の上にそびえ立ついかにも年代がいってそうな大きな日本家屋を指さし。
「ホントだ」と塩原も目を丸めていた。
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