第37話


あれー、確かに今日のお昼まであった筈なのに。



少なくとも弓削くんが拾ってくれて、私もそれを受け取った。



家に帰りついて財布の中身を確認すると、財布の最奥ポケットに”それ”はちゃんと収められていた。



入れ間違えちゃっただけか。



この時私はそう思うことで片づけた。



――――



翌日、



明日は休み!



と意気込んで出社するも、午前2件、午後3件、怒濤の営業回り。



HybridTeaカフェのプレゼンは明日の休みを入れてたったの五日しかない。



この日は流石に塩原も弓削くんも定時以降になっても家路に帰宅することなく、コンビニや牛丼屋で買った夜食を口にしながら私たちはあーでもない、こーでもない、と意見を出し合った……が、結局「あっ!」と出し抜ける斬新なアイデアは見つからず……



しかも話は同部署の後輩たちの愚痴に逸れていった。



「お盆休みって言ったらさー、13日から15日までだよね普通。そしたら16日の土曜日も休みたいって。まぁ有休だから取っても問題ないけど、それ言ったら『普通の会社は土曜休みっすよね、有休扱いっておかしくないッスか?』なんて言われて!」



「何だそれ、入社当時からうちは水曜日と日曜日休みっての決まってて知ってた筈じゃん」と塩原がカップラーメンをすすりながら目を吊り上げる。



「それ以上言うと今度はパワハラだー!とか喚かれるしね、黙って聞き流したけど。イマドキの若者って!とか思ったり。



……あ、ごめんイマドキの若い弓削くんが居るのに失礼な発言しちゃったね」と慌てて言うと



「いや、いいですよ。俺は13日と14日だけ取れればいいんで。その日実家に行って奈津美を両親に紹介しようと思ってるんですけど、まぁだ奈津美がへそ曲げたままで…」



弓削くんはがくり。



「奈津美がそんなに長引くことって珍しいよね。それ以外に心当たりないの?」



牛丼を頬張りながら弓削くんを見ると彼は視線を泳がせた。



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