悲恋坂
第34話
■悲恋坂
塩原から貰った鉄火巻きを口に入れ
「あーあ、今日もこんな時間。バスで帰ろうかな」
腕を組んでいると
「危ないしな、送ってくけど」との塩原の申し出は流石に断った。
「でも……あれ?今度オープンする店舗、バスが通る道の途中だ。普段寝てて全然気づかなかったけど。
ちょうど良かった。バスから外の様子覗いてみるよ」
私は資料をぺらぺらとめくり、何となくの停留所を頭に入れる。
塩原はそれ以上何かを言ってくることなかった。
それでも塩原は私を深夜バスのターミナルまでは送ってくれた。
「塩原も遅くなるからいいのに」と申し訳なく言うと
「良いって……てか、これくらいしかできなくてごめんな」
ごめん―――……
は、私の方だよ。
未だはっきりと答えを出せていない私。なのにこうやって塩原を振り回して。
バスはやはり予定通り来た。
「ありがと、また明日」
「おう、気を付けてな」
手を振りながら、私はまたも最後尾の席に向かう。
この日も乗客は私一人だけだった。
バスが発車するまで、発車しても尚私は後ろを振り返りながら塩原に手を振り、ようやくバスは走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます