悲恋坂

第34話

■悲恋坂




塩原から貰った鉄火巻きを口に入れ



「あーあ、今日もこんな時間。バスで帰ろうかな」



腕を組んでいると



「危ないしな、送ってくけど」との塩原の申し出は流石に断った。



「でも……あれ?今度オープンする店舗、バスが通る道の途中だ。普段寝てて全然気づかなかったけど。



ちょうど良かった。バスから外の様子覗いてみるよ」



私は資料をぺらぺらとめくり、何となくの停留所を頭に入れる。



塩原はそれ以上何かを言ってくることなかった。



それでも塩原は私を深夜バスのターミナルまでは送ってくれた。



「塩原も遅くなるからいいのに」と申し訳なく言うと



「良いって……てか、これくらいしかできなくてごめんな」



ごめん―――……



は、私の方だよ。



未だはっきりと答えを出せていない私。なのにこうやって塩原を振り回して。



バスはやはり予定通り来た。



「ありがと、また明日」



「おう、気を付けてな」



手を振りながら、私はまたも最後尾の席に向かう。



この日も乗客は私一人だけだった。



バスが発車するまで、発車しても尚私は後ろを振り返りながら塩原に手を振り、ようやくバスは走り出した。



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