1時の真珠

第21話

■1時の真珠




何で嫌な時間と思ったのだろう。



それは一昨日乗ったバスと関係しているのだろうか。



いやいや、違うでしょ。



頭を振り、掛布団の裾をきゅっと握り布団の中に潜り込むと





ころころ……




小さな―――とても小さな音がすぐ近くで聞こえた。



何の音だろう。



布団の中で目をまばたいた。





ころころ…




その音はまたも聞こえてきた。



何て言えばいいのだろうか、小さな物が物とぶつかる、そんな感じの音だ。



それ以外例えようがない。



あ……そう言えば、幼い頃田舎のおばあちゃんの家に遊びに行ったとき、おばあちゃんの家でビー玉遊びをした、その音とよく似ている。



止せばいいものの、私は何故か布団から顔を出し、その音がなる方へ耳を傾けた。



ころころっ…



また音が響いた。



どこで―――……?



ころっ



すぐ近くだ。



目をまばたきながら、私は枕元に置いたメガネを手繰り寄せ掛けた。



すると暗闇の中、ころころと”何か”が転がってくるのが見えた。



”それ”はやはりビー玉のようだった。



”ビー玉”と例えたのはあたらずと雖も遠からず、と言うところか。



何だろう。



暗がりの中、メガネの奥で目を細めながら、その転がってきた”ビー玉”に手を伸ばしたとき、



私は”それ”が初めて真珠の粒だと言うことに気付いた。



何で―――…?



私、こんな大きな真珠のアクセサリー持ってないけど……



その瞬間だった。



私の手に”誰か”の手が重なった。



白い手だけが暗闇からにゅっと出てきていて、私の手首を掴んでいる。



――――!!!



私は目を開いた。



「ひっ―――!」



短く悲鳴をあげる。



それだけで充分な恐怖なのに、



その手の主は








『―――――……て』







女の……か細い声が暗闇の中、何事か呟き、



「ひっ!」



再び叫び声をあげ、思わずその白い手を払いのけ、”真珠”から慌てて手を離すと



その白い手がすぅっと後退しながら消えていき、やがて”真珠”だけが残った。



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