第7話


何だったんだ……あのバスは…



”この”乗車券と言い、あのデジタル時計と言い。



でも運転手さんはごく一般的な運転手さんだった。運転が荒いわけでもなく、かと言って慎重過ぎる程でもない。(ついでに言うと少し不愛想な気がするが)



私は腕時計に目を落とした。



時計は夜中の1:02をさしていた。



あのデジタル時計はきっと設定ミスに違いない。



けれど





この乗車券は―――……?





財布に仕舞った乗車券をそっと取り出すと、やはりよれよれの薄汚れた乗車券が、XXバス停→△△バス停とあった。



XXバス停も△△バス停も知らない。



アパートの帰り道、何となくそのバス停をスマホで検索してみると、どれもヒットしなかった。



でも……



△△はきっと地名で、この先にあるバス停のことを指しているのだろう。



今は地名が変わっちゃってるけれど。昔はそう呼ばれていることを何となく知っていた程度だ。



市や区が合併したり、区画整理される前の話。



この土地は割と古い。私の親世代でも『あー、あの場所ね』と言うぐらいに多少の認知度はある。と言うことは、親世代よりもうんと前に……



ざっと計算すると50年…?ううん、もっといってるかも。



とにかくそれぐらい昔の乗車券だと考えてもいいのだろう。



それが何故―――あのバスに?



バス自体、ここ数年で路線は同じだろうけれど(無くなった路線や新しいルートの路線もある)車体が大幅にリニューアルされてデザインも変わっている。



「ってことは、外を塗り替えただけなのか。



ま、バスなんて早々安いものじゃないしね」



と一人で納得しながら、再びその乗車券を財布に押し込んだ。



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