第79話

そしてそう呟いたかと思うと、阿佐谷さんは話し始めた。




「負けねえ、負けんねえ、負けねえ。

誰にも美咲を譲らねえ。

阿佐谷だろうが須藤だか関係ねえんだ。

絶対美咲を譲りたくない!


そう心ん中で何度も思ってる。


でも、それでも、雅人に会って、そして俺に会って揺れんだろ。


こんなカッコイイ人が、

こんな素敵な人か、って。


そう思いながら、言葉にしねえと不安で仕方ないんだろ?


後は葛藤もあるな。

俺や雅人に憧れてたんだろ?

だけど、その気持ちを前に出すともう駄目だってわかってるからどうにか心にストップをかけてる。


違うか?」





そう言われて、ジョーはぶるっと身体を震わせた後顔を青くした。




「な、なんで」



「このくらいわかるのが、阿佐谷凜太郎だ覚えておけ。


そして、お前が葛藤したって間違いじゃねえよ。

憧れんのも俺をかっこいいと思うのも素敵だと思うの当たり前な事なんだよ。

だってそうだろ?全部事実なんだからしょうがねえんだよ」




そう真顔で言っている彼をかっこよくないだなんて思う人がいるだろうか。



魅せられるとはこの事だろう。



普通なら、こんな言葉を言われて、何を言ってるんだと思う。


でも彼が言っている事全ては正しくて、彼の言葉の一言一言が異常なまでに胸に響いた。

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