第70話

「おいしいです」


ハイリが嬉しそうに笑いながら、須藤さんと阿佐谷さんに言うと、二人はニヤッと笑った。



「他の奴らは、ああこれは美味しいんだなくらいだろ?

でも。おめえは酒に味わかるだろ?」



そんな阿佐谷さんの言葉に首をかしげると。



「顔でわかんだよ。

お前らは、あっ美味しいなくらいな表情だけどよ、コイツは口に含んだ瞬間、目が輝いた後にもう一口ゴクッと飲んだんだよ。


それはこの味がどれだけ美味いかわかるからだ」



俺らに説明してくれるように、丁寧に教えてくれた。


そういえば、ハイリは付き合いとかでいつも飲まされていたし、ホテルでもよくワインや酒を時折飲んでいる姿を見るもんなぁ。


他のメンバーはそんなに皆飲む訳じゃない。




「凄いですね、まさかそれだけでそんなのがわかるなんて」




苦笑いをして、ハイリがそう呟くと、阿佐谷さんはケラケラっと笑ってから。



「生きてる年数が違えんだよ」




歳の数だけ、こんなにかっこよくなれるのかとなんだか情けなくも思ってしまった。

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