第34話


「私からもお願い致します」



隣で柏木さんも丁寧に頭を下げた。



俺はホントは柏木さんにこんなことさせたくない。



いつだって俺の元で、安心して仕事をして欲しい。



それなのに現実は、いつまでたっても出来損ないの俺のフォローばかり。



かっこ悪くて、申し訳なくて……きっと今柏木さんの顔をまともに見ることができないだろう。






「事情は分かりますがね、おたくの部下のミスでしょう?そっちで何とかしてくださいよ」



単なる部下ならどれだけ楽か。



もし佐々木が同じミスをしたならば、怒鳴るだけでは済まさない。




俺の気苦労を知らずに、こっちも手一杯なんだ、と言わんばかりに経理部長は肩をすくめた。



きっと嫌味じゃないだろう。



ホントにここは、それだけのことを言う程多忙な部署なんだ。



「先方にはもうこちらの事情を話してあるのですが、やはりあちらも会計上の処理をしてしまったようで」



「でもこちらの規則は規則で、不可能なことです。折れるわけにはいきませんよ」



折れるわけには……会社の意地ってヤツだな…



そんなこと分かってる。



でもここで引き下がるわけにはいかないんだ。



「そこを何とか!」



「どう言われても無理なものは無理です」



そんな押し問答が続いて、結局話の収集はつかないまま俺は一旦引き上げることを決めた。



こんなことしていても時間の無駄だ。



他のどこかに突破口を見つけるしかない。




「分かりました…出直してきます」



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