第28話


恵比寿駅からJR山手線で、品川まで。



ここから俺のマンションまで徒歩15分。ほとんど高輪駅に近い場所だけど、都営浅草線に乗り換えるのが面倒だったので、俺はこっちを選んだ。



品川駅を降り立って、マンションまでの道を歩きながら俺はスマホを取り出した。



迷わず“柏木さん”のメモリを選択して、俺は電話をかけた。



TRRRR…



3コール程で相手は電話に出た。



「あ。もしもし、柏木さん?」



『………違います』



…え?俺掛け間違えた……?



『って言ったらどうするんですか?』



もう!この人はっ!!手を変え品を変え、いつも俺からの電話を真面目に取り合ってくれないんだから!!



でも



そんなところも…好きなんだよなぁ。



惚れた弱みっての?



何か可愛くて…怒る気力も失せるっつーの。



「…あのさ、今日親父とごはん食べに行ったんだって?あいつ、何かしなかった?」



『……何か……』



柏木さんはちょっと考えるように言葉を切り、少しの沈黙が降りてきた。



やがて



『ああ。大丈夫ですよ。おじさまは部長と違って紳士ですから。ホントに血が繋がった親子かどうか疑わしいものですけど…。部長、実は貰われっ子なんじゃ…』



「そうなんだよねぇ。俺実は橋の下で拾われた…って!そんな古典的なボケはどーでもいい!無事家に着いてる?」



『はい。何を心配されてるのか分かりませんけど、私は大丈夫ですよ』






その一言にほっと胸を撫で下ろす。



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