第23話


「あぁそう言えば…裕二てめ!この前のAVハズレだったぞ!!」



結局その後すぐにゴミ箱行きになった。



「まぁまぁそう怒りなさんなって。その話は置いといて、あの日もさ……



俺、綾子の帰りを待ってたんだ」



ああ、そう言えば女を待ってるって言ってたっけ。



妙に真剣な顔つきで……



「あれ!綾子だったの!!?AV持って??」



「ツッコむとこそこかよ。AVは、ホントにお前にやるつもりで持ち歩いてたんだよ」



裕二がちょっと白い歯を見せて笑った。



「何時に終わるか分からないし、話し合うつもりもないから無理って言われてたけど、俺はどうしても綾子に気持ちを伝えたかったから、何時間も待ち続けたよ」



「お前…それ、ストーカーじゃん」



可哀想なものを見るような目つきで、俺は裕二をちょっと哀れんだ。



でもホントのところは……



羨ましかったんだ。



こいつの何にも恐れずにまっすぐに突き進むその姿勢が。





「俺、綾子のこと好きだよ。あいつのこと大切にしたいと思う。あいつを支えてやりたいと思う。



その気持ちをまっすぐにぶつけて、ようやく一週間前、付き合うことになったんだ」




裕二ははにかみながらもちょっと笑い、指でピースサインを作った。



こいつのこんな顔初めて見た。



何て言うんだろ……






すごく




すごく幸せそうだ。





いつかの桐島の表情を思い出す。



あれは結婚式の日だったか……






「そっか。おめでとっさん」



俺は苦笑すると、ビールのジョッキを裕二のジョッキに軽くぶつけた。



心から素直に祝福したかったけど、




何だかもやもやするのは、自分にはない強さをこいつが持ち得て居たからだろうか。





きっと




こいつの行動力が羨ましかったんだな、俺は……





みんな





みんな幸せを掴むために動き出している……







それなのに俺はいつまでも止まったままだ。



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