第5話


東京メトロ日比谷線で六本木の駅から、広尾まで柏木さんと満員電車に揺られた。



たった一駅だけど、満員列車がこれほど辛いものだったとは。



昨夜のアルコールが抜けきっていないのに加え、睡眠不足。



人の波に酔いながら、会社に到着する頃には俺はぐったり。



朝からあんな体力を使うとは思わなかった。



柏木さんも車でこればいいのに…でもまぁ車で通勤する距離でもないか。



なんて考えてデスクに向かっていると、佐々木が出勤してきて、始業時間の10分前に緑川さんが出勤してきた。



彼女は一番下っ端だというのに、いつもこの時間帯。



重役出勤というわけだ。



まぁ始業時間だけは守っているわけだから、俺たちは何も言わないけど。



それでもデスクの掃除やコーヒー出しは自然早く出勤してくる柏木さんと佐々木の役目になる。



緑川さんはデスクに座ると、すぐにコンビニで買ってきたサンドイッチを食べる。



いつもの習慣だ。遅く出勤してきてそれはどうなの?と突っ込みたくなるけど、



でも誰も咎めはしない。



何故なら面倒くさいから。



人間注意されなくなると、終わりだな。



なんてしみじみ思っていると、緑川さんが俺の方をじっと見て……と言うか睨んでいるように見えた。



俺がお前を恨んでも、お前に恨まれる覚えはないぞ。



「…どうかした?」



半ば呆れたように問いかけると、






「部長、昨日と同じシャツですね」






なんて言葉が返ってきた。



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