寂しい女

第2話

**寂しい女**



柏木さんは「寂しい」と言った。




初めて俺に脆い部分を見せてくれた。




電話の向こうで柏木さんが泣いていたときはびっくりして



どうしたらいいのか分からなかった。





できればそのときすぐにでも飛んで行って抱きしめたかった。



この腕で抱きしめて、彼女の涙をそっと拭ってあげたかった。







でも




彼女がそれを望んでないことを俺は知ってる―――







柏木さんが俺に弱いところを見せてくれて嬉しいけど―――――それと同じぐらい悔しい。









きっと彼女はわずらわしい過去を思い出したんだ。








忘れさせてあげたい。




寂しい、と思わないぐらい、いつも近くに居たい。




近くに居て







彼女を護ってあげたい。








でも俺は彼女に嫌われることを恐れて一歩も動けなかった。





もどかしい思いを抱えながら、俺はただ電話での彼女の声に頷くしかできなかった。



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