第21話

常に男子生徒に囲まれて騒がしくしているのを見た他の女子生徒は、天野のことを、



「いるよね〜。ああいう男っぽさを装って男に近付く、なんちゃってボーイッシュ女」



などと噂をされているが、天野本人はそういう女子特有のドロドロとしたひがみが鬱陶うっとうしいとかで、態度を改めて女子と仲良くしようなどとは一切考えていない。



そして、タイプは全然違うが、同じように女子から僻みの的にされている美紅とは何故かウマが合い、よくつるむようになったのだ。



美紅自身も、天野は他の女子とは違って気兼ねしなくていいので、一緒にいて楽だと思っている。



そんな天野がよく宿題を忘れて美紅を頼る理由は、彼女が放課後はアルバイトに明け暮れているから。



進学校であるこの檸檬高校は、校則によりアルバイトは禁止されているのだが、



「私のバイト代がこの学校の利益になってるんだから、別に良くない?」



家庭の事情で学費を自分で稼ぐしかない天野に、担任である市川は何も知らないフリを通しているようだ。



天野も市川の対応には感謝をしつつ、同じ学校の生徒たちに見つかりにくいよう、高校生が集まりやすそうな場所は避けて、デパートの寝具売り場で販売員のバイトをしている。

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