束縛なんてしたくないけれど(直人side)

第91話

ゆづが専門学校を卒業する日を、俺はずっと心待ちにしている。



理由は――ゆづが卒業式を終えて帰ってきたら、そのままその足で一緒に婚姻届の提出に行く約束をしているから。



俺とゆづが正式に夫婦になる大切な日だ。



本当は、卒業式が終わったらすぐに帰って来て欲しいけれど……



夕食も入浴も済ませた後の、ゆったりとしたくつろぎの時間、



「あのね、ナオくん……卒業式の後、クラスの子たちとご飯食べて来てもいい?」



リビングのソファーに俺と並んで座っていたゆづが、『卒業式のご案内』と書かれたプリントを手にして俺の顔を恐る恐る覗き込んだ。



俺にとってその日はゆづとの大切な記念日となる日だけど、ゆづにとってはクラスメイトたちとの最後の日でもある。



「卒業式ってホテルの立食パーティーだよな? ってことは……晩飯も食ってくるってこと?」



2人の門出を祝って、その日の夕食は豪勢にしようと張り切っていたのに。



「ナオくんとの大切な約束があるから……ナオくんがダメって言うなら、行かない」



行かない、と言った瞬間のゆづの表情はとても落ち込んでいて、



「……」



咄嗟とっさに、行くな、と言いそうになった俺は慌ててその言葉を飲み込んだ。

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