第89話

ナオくんは宣言通りに私に何度も絶頂を与えた後で、最後に私と一緒に果てた。



鉛のように重くなった体に鞭を打って、シャワーを浴びるためにベッドから下りようとして――



「……」



リビングで衣服を全て剥ぎ取られたので、身体を隠せるものが何もないことに今更ながらに気が付いた。



「ゆづー? どこ行くの?」



困惑している私を布団の中に引きずり込んで抱き締めるナオくんの腕は、本当に賢者タイム中なのかと疑いたくなる程に力強い。



「シャワー浴びたくて」



「俺も一緒に浴びたいから、もう少し待って」



そう言って、更にぎゅうっと抱き締められる。



「……一人で浴びたいんだけど」



だって、ナオくんと一緒にバスルームに入ったりしたら――



「えぇー。一人じゃゆづとイチャイチャ出来ねぇじゃん」



「……」



ベッドにいる時か、下手をするとそれ以上に意地悪な求め方をされるって分かっているから。



「一緒に入ろ、ゆづ」



「……」



「それが嫌なら、ゆづが全裸のまま恥ずかしそうに寝室を出ていくのをずっと見つめとく」



「ひ、卑怯だ」



キッとナオくんのことを睨みつけると、



「だって、ゆづのこと大好きなんだもん」



ナオくんはいつも通り、ふわりと甘く微笑んだ。

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