第55話

「ナオくんの部屋って、ここだよ?」



思ったままを訊ねると、



「……違う。今俺たちが住んでる部屋」



苦しそうな小声でそんな答えが帰ってきた。



――俺が住んでる部屋、って。



私としてはよく泊まりに行ってるって感覚なんだけど、ナオくんは一緒に住んでると思ってくれてるんだ。



ナオくんのお嫁さんになることを夢見ている私には、当然、ナオくんと一緒に暮らしたいという夢もある。



……そっか。



それはもう、とっくに叶ってたんだ。



私の小さい頃からの夢が、一つずつ確実に叶えられていく。



それが嬉しくて、



「ナオくん……ありがと」



ナオくんの胸に、すりっと頬ずりをした。



「……っ、何だよ。急に礼なんて」



「私の夢は、ナオくんじゃないと叶えられないから」



「俺だけの特権……って思っていいんだな?」



ナオくんはぽつりとそう零すと私の体を離して、乱れた衣服を整えてくれる。



ワンピースのボタンを全部留めてから、ナオくんは私の目をじっと見つめて……



再び重なり合う唇。



今度は優しく触れ合うだけのキスなのに、何故だか全身が火照ったように熱くなった。

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