第53話

「え……あー、やば……俺の方がめちゃくちゃ嬉しいかも……」



そんなことを呟いたナオくんは、また私のことを抱き締めてきた。



「……キス、していい?」



何故か小声で訊ねてきたナオくんを不思議に思いながらも、



「うん」



私も丁度したいと思っていたので素直に頷くと、



「すぐ隣の部屋に知佳がいるから……声は我慢しろよ」



小声のままでそんなことを告げられ、すぐに唇を奪われた。



「……!」



声を出すなと言う割には、ナオくんの舌は容赦なく私の口内を掻き回す。



「……っ!」



思わず、ナオくんのシャツの袖をぎゅっと強く握った。



言われた通り、必死になって我慢していると、



「……我慢されると余計にかせたくなる」



離れた唇からそんな悪魔のような囁きが聞こえてきて、



――プツンッ……



急に胸元の締め付けがなくなった。



えっ!? と思った瞬間、温かい何かに胸の膨らみを包み込まれる感覚が。



やわやわと形を崩すように優しく揉まれて、



「……っ」



いつの間にかシャツワンピの前ボタンと下着のホックが外されていたことに、ようやく気が付いた。

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