第16話
まるであつらえたかのようにピッタリと嵌まった指輪を、不思議に思って眺めていると、
「……ゆづが寝てる間に勝手に指のサイズ測った」
バツが悪そうな顔をしながら、また私の向かいの席に着くナオくん。
「それで指輪をオーダーして、今日がその受け取り日で……いつプロポーズしようか悩んでたんだけど」
ナオくんは、また不機嫌そうな顔をする。
「……松野さんとか他の男がゆづに近付いてるの見て、我慢出来なくなった」
「……」
「ゆづの気持ちを利用したみたいになったけど……でも、一刻も早くゆづを俺だけのお嫁さんにしたくて」
ナオくんは女の子から凄くモテるから、ついそっちの方を気にしがちだったけれど。
――そうだった……ナオくんって、物凄いヤキモチ焼きなんだった。
「本当は今すぐ入籍したいけど、それは流石に出来ないから……せめて指輪だけは、なるべく皆から見えるように付けといて」
そう言うと、ナオくんはまた静かに食事を再開した。
随分と冷めてしまったけれど、このスープはそれでもとても美味しいと思えるから不思議だ。
「ナオくん」
私が呼ぶと、ナオくんはスープを飲む手をぴたりと止めて真っ直ぐに私を見る。
「私はナオくんのことしか見えてないよ」
本気でそう告げた私に、ナオくんは困ったような笑顔を浮かべた。
「知ってる。だからこそ、周りの男にそういう目で見られてても気付かないんだよ、ゆづは」
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