パティシエ修行

第1話

今日は、私――森川もりかわ 結月ゆづきが内定をもらった洋菓子店『パティスリー・トモ』で初めて働く日。



今はまだ専門学校生だからフルでは入れないけれど、研修を兼ねてアルバイトとして入社する。



学校が休日の今日は、朝から夕方までの勤務の予定だ。



オーナーシェフの松野まつの 友季ともきさんとは前から顔見知りだけれど……



プライベートと仕事ではきっと全然雰囲気が違う。



知り合いだからって甘えないようにしなくては。



とにかく、一日でも早く仕事を覚えて、あのお店の戦力にならなくちゃ。



制服はお店で着替えるので、通勤の服は特に指定はないらしく。



それでも初出勤日なので、カジュアル過ぎないキレイめの服装で行くことにした。



そして、



「ゆづー。一応、弁当作ったけど……」



私のことを“ゆづ”と呼んだ彼――間宮まみや 直人なおとが、淡いピンク色の巾着袋を差し出してきた。



彼は私の幼なじみで……私の、とてもとても大好きな彼氏。



子供の頃から料理が得意な彼は、現在イタリアンレストランの料理人をしていて。



今日は彼も出勤日で、自分の分のついでに私のお弁当を作ってくれたのだ。



「わ! ありがとう、ナオくん!」



お弁当を両手で受け取ってそう言うと、



「ん」



ナオくんは少しだけ照れくさそうな顔をしながら短く返事をした。

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