チャレイリー
女月満月(めつき まんつき)
第1話
俺の名前は、佐藤 一(はじめ)。
年は52歳。職業は本屋の店員だ。
バツイチで恋人なし。
体型は小太り。
友達はいない。
ありふれたおっさん。モブおっさんとでも言うか。
高卒で中小企業に入社。営業の仕事をしていた。
まぁブラックと言えばブラックだった。営業職だからな。
本人的には、昭和の感性で言えばしょうがないと割り切れる部分もあった。
ある日ノルマがきつくてストレスを溜めこんでいた中、我慢の限界を超える理不尽を突きつけられた。
その場その場で発言が変わる上司。
Aと言われたからAを踏まえて仕事する。上手くいかなかった。
人が相手だ。そんなことは多々あることだ。
そのまま自分の失敗として報告したさ。
そしたらBって指示したのに何故Aの感覚で仕事をしたんだい?と
話をきちんと聞いていたのかな と
そおいう上司だと思って流した事が多かったのに
モブおっさんだもの人生に煮詰まっていたんだろう。
反射的に「わかりました。ご迷惑をおかけするのも心苦しいので退社の方向で考えさせて頂きます」 言ってしまった。
上司は仕事に聞き忘れることもあるさとか、失敗は辞めることで無く穴埋めしようと頑張る気持ちで責任とろうよ等言ってたが無視した。
40代後半でスキルがあるわけでも無く、人間的魅力に溢れてるわけでもない。
再就職は正社員雇用であれば、ありがたいというレベルだ。
それすら望みすぎな状況なのは理解している。
高卒で働き始め社会という枠を教えてもらった会社だが、もう気持ちはない。
退社に向けて動くだけ。
形だけある有給も使った。
煮詰まってたんだなと思う。
不安がのしかかるのに、スッキリした気持ちが大きかった。
日々無難に過ごし退社の日を迎えた。
退職金と呼べない金額の明細を受け取り会社を後にする。
離婚でわずかばかりの貯金を無くし一人暮らしでめんどくさく外食ばかり。
お金は貯まらなかった。
のんびりする余裕はない。
再就職へ動こう。
ひと月半くらいで、やっと拾ってくれる会社があった。
今働いている本屋だ。
前の会社しか知らないのでわからないのだが準社員と言う名のパートだ。
フルタイムで雇ってもらったというだけ。
生活スタイルもコンパクトに。当然自炊だ。
アパートと職場の往復。途中割引タイムの食材を買うくらい。
あとは家でネットで暇つぶしするだけ。
心に揺らぎなどない生活が三年続いたある日、心が跳ねた。
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