ケーキ屋さんのクリスマス

第93話

舞が友季から貪られるようにして愛された日の、翌日。



「……」



寝不足とダルさを抱えた体にむちを打ちながら、必死にホールケーキの仕上げをする舞と、



「♪」



何故か上機嫌でカスタードクリームを炊いている友季の温度差を、



「鈴原さん、めちゃくちゃ機嫌悪そう……喧嘩っすかね?」



「いや、でもシェフが凄く機嫌良さそう」



木村と上田が心配そうにチラチラと見ていた。



舞が仕上げたケーキを店に運ぼうとして、



「わっ……!」



足がもつれてフラついたところを、



「おっと……大丈夫?」



山田が舞の肩を抱くようにして支えた。



「あっ、はい。ありがとうございます」



慌てて頭を下げる舞を、



「気を付けなよ」



山田は優しく笑いかけて見送ってから、



「えっ……」



こちらを凄い形相で睨みつけている友季と目が合い、固まった。



「シェフ……ついさっきまで良さそうだった機嫌はどうしました?」



「今の山田さんのせいで悪くなった」



友季が銅鍋の底が焦げ付かないようにヘラで混ぜながら、山田を鋭く睨みつける。



「え……鈴原さんのこと、助けない方が良かったですか?」



もし山田があの場にいなかったら、今頃は――



「……いや。ありがとう」



友季はぷいっと顔を背けて言ったが、



「今、一瞬すげー嫌そうな顔しましたよね!?」



顔を背ける直前の友季の顔を、山田はしっかりと見ていた。

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