第2話

やっと泣き止んだ舞は、



「お兄ちゃん、お医者さんなの?」



絆創膏を箱ごと持っている彼を見て、首を傾げた。



「あ……俺、お菓子作るんだけど、その時によく怪我するから」



彼は答えてから、あっそうだ、と小さく呟く。



鞄の中をゴソゴソと探り、



「お嬢ちゃん、痛いのガマン出来たから、ご褒美にこれあげる」



セロハン製の袋に入ったチョコチップクッキーを取り出して、舞に差し出した。



袋の中のそれを1つかじった舞は、



「おいしーい!」



途端に笑顔に。



「お兄ちゃんが作ったの!? すごーい!」



「パティシエ目指してるからね」



「ぱてぃしえって、なぁに?」



初めて聞く単語に舞が首を傾げると、



「ケーキ屋さんだよ」



彼も笑顔で教えてくれた。



「私も! 私もケーキ屋さんになるー!」



元気に答えた舞に、



「おっ。じゃあ将来の俺のライバルだな」



そんな台詞を言いながらも、彼は嬉しそうに笑っていた。






そんな、名前も知らない彼の笑顔と甘く美味しかったチョコチップクッキーの思い出を胸に、舞はパティシエになるという夢を目指す――

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