第25話

そして、別れの時間が近付くと、決まって彼女は悲しそうな顔をして言う。



「私ね、実は重い記憶障害があって……一晩経つと、昨日まで一緒に過ごした人のことをすっかり忘れてしまうの……」



「うん……それで?」



「私は、あなたのことを忘れたくない……だから、お願い。ずっと私の傍にいて欲しいの」



「……」



彼女は、ちゃんと自分の病気を理解してはいるが、完全ではない。



俺と一緒に朝を迎えて、目覚めた瞬間どうなってしまうのかを覚えていないんだ。



だから、俺はにっこり笑って、彼女に諭すようにゆっくりと告げる。



「俺は、美姫さんの隣人だよ? ずっと隣の部屋にいるから、だから安心して?」



そうすると、彼女は安堵の表情を浮かべる。



「分かった……じゃあ、今日はとりあえず、サヨナラね?」



「うん、そうだね」



俺が笑顔で答えると、美姫も笑顔になる。

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