第40話

LHRの後、次の時間は各委員会の会議のために教室を移動することになった。



学級委員長会議が開かれるのは3年生の教室で、



「おっ、唯ぃー!」



よく見知った顔を見つけた頼斗は、唯に向かって手を振った。



唯も1年生の頃からずっと学級委員長を任されていて、今年もやはりやるらしい。



「あれ? 頼斗? またジャンケンで負けたのか?」



昨年、ジャンケンで負けたせいだと散々愚痴を聞かされていた唯は、こちらへ寄ってきて首を傾げた。



「んー、まぁそんなとこ」



説明が面倒な頼斗はそう答えたが、



「え……?」



自分のせいだと思っている希美は、驚いて頼斗の顔を見上げた。



その直後、頼斗と目が合い――



頼斗は右手の人差し指をそっと唇に当てた。



「!」



その表情を見た瞬間、希美の頬がかぁっと赤く染まる。



「梅本さんもジャンケンで負けたの?」



唯は苦笑しながら、頼斗の隣に立つ希美を見た。



希美にとって、唯は親友の彼氏にあたる。



普段から面識があるので、気心の知れた人物が1人でも多くいる空間はありがたいと思う。



「あ、はい。そんなところです」



希美も、頼斗に話を合わせておいた。



「2人とも、ジャンケン弱いのかー」



唯は相変わらず苦笑していたが、



「それとも、梅本さんと一緒にやりたくてわざと負けたのか?」



頼斗にだけ聞こえるよう、耳打ちした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る