第22話

その翌朝の学校で。



自分の席に大人しく着席した頼斗は、



「……」



右隣の席の、今登校してきたばかりの希美の横顔をちらりと盗み見た。



相変わらず赤ぶち眼鏡をかけていて、化粧っ気の全くない地味な雰囲気の希美。



昨日駅で見かけた希美とは、同一人物とは思えない程の変わりぶりだ。



「……私の顔に、何か付いてる?」



こっそり見ていたはずだったのが、いつの間にかガッツリ見ていたらしく、希美がいぶかしげな顔をこちらへ向けてきた。



「あ、いや……」



頼斗は慌てふためき、



「梅本って、プライベートではコンタクト付けてんの?」



何故か突拍子もない質問を口走っていた。



その瞬間、



「……!」



希美が、赤ぶち眼鏡の奥で驚いたように目を見開いたのが見えた。



「……気付いてたんだ、私のこと」



その一言で、昨日の駅で希美も頼斗の存在に気付いていたのだとうかがい知れた。



「そっちこそ、俺のこと気付いてたのか」



頼斗がそう返すと、



「桐生君は遠くから見ても分かるよ〜」



希美は、へら、と笑った。



「皆が振り返ってまで見てるから、空気で分かる」



「……」



「絶対、尾行とか向いてないタイプだよね」



頼斗をビシッと指で差した希美は、昨日の悲しい表情が嘘のように明るく笑っている。

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