第55話

「今日は、もう言わない」



「……今日は?」



姫花が、恐る恐る顔を上げて唯を見る。



「明日まで我慢する」



その笑顔は、姫花にはまるで悪魔のように見えて。



「明日からも言わないでよ!」



ハッと我に返った姫花は、慌てて反論した。



「無理。姫花可愛すぎるもん」



「あっ! また言った……!」



また顔を真っ赤にする姫花に、唯はくすくすと楽しそうに笑っていたが――



不意に笑うのをやめ、真剣な表情をした。



「好きだよ、姫花」



「……っ!」



茹でダコ並に真っ赤になる姫花。



「姫花は? 俺のこと、本当はどう思ってるの?」



先程は待つと言っていたのに、急に姫花へと迫ってくる唯に、



「唯のばかぁ!」



姫花はまた泣き出した。





「……で? なんで俺の部屋にいるの?」



夕食が出来上がるのを待つ間、唯は頼斗の部屋で過ごしていた。



「姫花に追い出された」



シュンと項垂れる唯に、



「今日は何をやらかしたんだ?」



特に驚いた様子もなく問いかけた頼斗は、相変わらず少し冷めている。



唯は、先程の出来事を簡単に頼斗へと説明し、



「えっ? 結局、もう告ったの!?」



先程までのクールさはどこへやら、頼斗は目を見開いて驚いた。

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