プロローグ〜ふたたびのいろ。〜

第1話

とあるマンションの、とある一室のリビングに、アフタヌーンティーを楽しむ1組のカップルがいた。



男の方――桐生きりゅう すなおは、サラサラの漆黒の髪に、宝石のように煌めくあおい瞳を持っている。



女の方――如月きさらぎ 沙那さなは、背中まで伸ばした柔らかな栗色の髪にウエーブをかけていて、黒目がちの大きな瞳が印象的。



大きなソファーで横に並んで座っている2人の前には、大きなティーポットが1つと綺麗な模様のティーカップが2つ。



お茶菓子は1人分のみで、沙那のすぐ目の前に置かれている。



沙那はシフォンケーキにフォークを刺しながら、



「えっ? 結局、『そらいろ。』書かないの?」



驚いて純の蒼い瞳を覗き込んだ。



「俺の自叙伝を出すこと自体は、三上みかみさんも乗り気だったんだが……」



純は一旦言葉を区切り、苦々しそうに顔を歪めた。



「タイトルで揉めてな」



「あぁ……」



沙那は納得した。



モデル・桐生 純のファンとしての意見を言わせてもらえるのなら、純の自叙伝に『そらいろ。』というタイトルは――純のイメージが崩れるので好ましくない。



そんな詩人やポエマーみたいな響きは、純には似合わない気がする。



三上が反対しても仕方がないと思った。

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