第42話
「ところで、スーはどうしてここに?」
それ程大きくはないナイロン製の黒いリュックを左肩のみに掛けた身軽そうな純に、沙那は首を傾げた。
「仕事の帰りだったんだが、丁度2人が見えたんでな」
「来るタイミング悪すぎでしょ」
顔をしかめる陽に、
「沙那に変なことを言う五十嵐が悪いんだろう」
純も思わずムッとした。
純が未だに1人立ったままなことに気付き、沙那は慌てて椅子の上の荷物に手をかける。
「あっ、スーも一緒に何か飲んでく?」
「え? あたしと沙那のデートに割り込む気なの?」
露骨に嫌そうな顔を純に向ける陽。
「……折角、ここは俺がご馳走してやろうかと思ったんだが要らないんだな?」
「いや要りますごめんなさいご馳走になります!」
陽は慌ててペコペコと頭を下げ、
「ささ、桐生さん! 何をお飲みになりますか?」
純にメニューを開いて差し出す。
「気味悪いぞ、お前」
純は心底不気味そうに陽を見ながら、恐る恐るメニューを受け取った。
2人のそんな仲良さげな様子を黙って見ていた沙那は、
「……っ」
この時、何故か胸の辺りがずきりと痛んだ気がした。
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