第二章

第10話

ここは、高級住宅街の一等地に位置する沙耶香の自宅。



沙耶香は自室のクローゼットからスーツケースを二つ鷲掴みにして、天蓋付きクイーンサイズのベッドの上に投げ広げた。

クローゼットからハンガーにかけてある服を片手でザーッと寄せ集めて、スーツケースにぎゅうぎゅうと押し込む。


沙耶香の後を追って入室した右京と左京は、狂ったように荷造りを始めた様子を見て顔面蒼白に。




左京「お嬢様! 旦那様への発言を今すぐ撤回して下さい」


沙耶香「嫌です。お父様に先程渡した誓約書にサインしたんです」



右京「うんぐぐっ……(どうか考え直して下さい)」


沙耶香「もう決めたんです。だから、止めないで下さい」




昨日愛海に心を刺激されて気持ちが一つに整った沙耶香は、心配で止めに入る二人に耳を貸さない。








生まれた頃から籠の中で生きて来た鳥は、外の世界を知らない。

ただただ与えられたものだけを信じて、籠の中から静かに外の景色を眺めてきた。



しかし、真っ青な大空を自由に飛んでいる鳥が羨ましくなった途端、いつしか羽を目いっぱいに広げて外の世界に羽ばたきたくなった。

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