戻って来なかった彼

第14話

ーー体育の授業が終わっても、滝原くんは保健室から戻って来なかった。


次の授業が始まって、終わって。

それでも教室に戻って来ない。

そして、頬杖をつきながら隣の空席を見て心配してる自分がいる。

私を助けてくれた時に負ったケガだったから余計に。


ケガ、大丈夫かな。

保健室でちゃんと手当てしてもらえたよね。

でも、どうして戻って来ないんだろう。



昼休みを迎えると、美那は教室から飛び出した。

まだ入学したてで保健室の場所がわからず、首を左右させながら廊下を小走りで進んでいると、購買で買った昼食を片手に廊下を歩いている怜が近づいて来てキョトンとした目で声をかけられる。




「あれ、美那っち。誰かを探してんの?」


「ごめん、急いでるからまた後でね!」




美那は夏都の事で頭がいっぱいで怜の横を素っ気なく通り過ぎて行く。

その様子を見ていた澪は、腕を組みながら怜の隣に立った。




「もしかして、美那を狙ってんの?」


「澪には関係ないよ」



「美那は友達なの。いつもみたいに遊びならやめて!」




澪はムキになってそう言うと、怜はとり合おうとせずに後ろを向いてバイバイと手を振って教室へ戻って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る