小さな願い

第24話

カレンダーが進む毎にコートの出番が増え、予防としてマスクを着用する人が増え始めてきた、12月の初旬。




場所はビジネス街のビルの地下にある、スチール撮影専用のスタジオ。


そして、今のセイは雑誌撮影の出番待ち。



スタジオで試し撮りをしているカメラのシャッター音が、隣接した楽屋内にいるセイの耳にも響き渡る。




鏡台の椅子に腰を下ろして雑誌を手に持ち、瞼を軽く落とした姿を鏡に映したセイは、専属マネージャーの冴木にポツリと今の願いを伝えた。




「冴木さん。これから先、俺の仕事を少しセーブしてくれない?」




すると、セイの背後で携帯を触っていた冴木がそのセリフを耳にすると、つり上がった目線が鏡越しにセイに向けた。




「セイ。なに言ってるの?あなたは売れっ子なのよ。あなたの歌声を待ってるファンがたくさんいるの。それに、あなたは一人で歌手活動してる訳じゃないのよ。デュオのジュンに迷惑がかかるじゃない」


「…わかってる。既に組まれてるスケジュールは仕方ないし、歌番組やスチール撮影はジュンに迷惑かかるから行くけど……。海外とか行って平日にかかるような仕事は、これからなるべく入れないで」



「急に仕事をセーブしたいだなんてどうしたの?何か仕事を休みたい理由でもあるの?」




いま以上のセイの成功を願う冴木は、デュオとしてブレイクしたセイの無茶な相談に頭を悩ませた。

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