第十章

修学旅行

第77話

ーー今日はずっと楽しみにしていた修学旅行の日。



早朝から最寄り駅で集合となり、近隣の小学校と共に修学旅行専用列車に乗り込んだ。

普段乗り慣れない対面式の座席に興奮し、期待に胸を踊らせているみんなの気分は上々。


だけど、谷崎くんとの間に心の距離感を感じながらの旅行はどうも気分が乗りきらない。




ガタンゴトン…… ガタンゴトン……




列車と共に身体が揺らされ…。

車中では友達と仲良く話したり。

時には景色を楽しんだり。

トンネルに差し掛かる度に、友達と一緒に息を止めたり。




数時間に渡る長い長い列車の旅。

親元を離れた一泊二日間の旅は、成長の証とも言えるだろう。




昼に現地へ到着。

清々しい空気をたっぷり吸い、気分をリラックスさせる。


集合写真を撮り終えてから観光先のお寺へ。

その流れで来場者専用のフリースペースに移動して持参したお弁当を食べた。



昼食終了後、私達は班同士で集まり担任の前に並んだ。




「各班で決めた観光場所にはぐれないように周って下さい。時間になったら宿に集合します。何かあったら各班に一つずつ配布した携帯電話で速かに連絡して下さい」


「はーい」




生徒達は指示どおりに別れて班行動を開始。




谷崎くんとは相変わらず話は出来ていないけど、今日は一度も目を合わす事もなく、班行動でバラバラになって視界から消えていった。




親友のように仲良くしていたのが嘘のよう。

今の私達は友達以下の他人。


クールな表情を保つ翔と、翔の表情を伺いつつも何も出来ない無力な愛里紗の前には、思春期という高い壁がそびえ立っていた。

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