ありがたい存在
第28話
ボールを取りに来た女子と咲は、倒れている愛里紗の安否を確認する為に上から顔を覗き込んだ。
「あたたっ…。う、うん。大丈夫…」
目を開けると二つの顔が心配している。
ボールが当たった直後は一瞬意識を失いかけたけど、何とか無事だった。
頭を抑えてゆっくりと起き上がる。
「保健室に行かないと」
「そこまでじゃないから、大丈夫」
「一人で立てる?」
「うん、平気だよ」
「頭痛い?」
「ちょっとズキズキする」
今日は何て日なの。
はぁ…。
その後も咲はずっと心配してくれていて、楽しみにしていた彼とのデートをキャンセルして私を家まで送ってくれた。
「今日のデートをあれだけ楽しみにしていたのに……、ごめん」
「愛里紗の事も大好きだって言ったでしょ。忘れちゃったの?」
「彼、怒ってないかな?」
「うん、大丈夫。気にしないで」
咲は優しい。
自分の事を二の次にして私の身を案じてくれる。
電車に乗ってる最中も『大丈夫?』とか『まだ痛む?』とか、心配の言葉を何度も届けてくれた。
朝からデートを楽しみにしていた事を知っている分、余計申し訳なく思っている。
だから、咲の悪い噂を立てている一組の子の気が知れない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます