ポッカリ空いた穴

第14話

ーー春の日差しが燦々と降り注ぎ、校門に立ち並ぶ桜が新緑へと衣替えをしている五月下旬。


金曜日の学校の帰り道に愛里紗は言った。




「明日は土曜日だし、今日はうちに泊まりに来ない?」




このように、咲に突然お誘いする事が多かった。

急なお誘いでも、泊まりの準備をしていなくても、彼女は泊まりに来てくれる事がある。


私には兄妹がいないし、母親も咲が遊びに来てくれる事を歓迎してくれる。




「誘ってくれてありがとう。…でも、今日は彼と初デートなんだ。せっかく誘ってくれたのにごめんね」


「そうだったんだぁ!咲はずっとこの日を楽しみにしていたもんね。良かったね。楽しんできて!」



「うん。ありがとう。…また今度誘ってね」


「いーのいーの!私なら全然大丈夫だから」




本音を隠して気丈に明るく振る舞ってみたけど、駅の改札で反対方向のホームに向かう咲にバイバイした後はガックリと肩を落とす。




咲とは今まで恋人のように仲良くしていたのに、彼氏が出来た途端に遊べなくなっちゃうのはちょっと寂しい。


まるで長年付き合っていた恋人にフラれたような感覚に。




本当は親友として彼氏とのデートを素直に喜んであげればいいんだけど……。

普段から二人きりで過ごす事が多かったせいか空虚感に襲われた。

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