彼の話
第5話
咲には今日まで色んな話をしてきたけど、初恋の谷崎くんの話は一度もした事がない。
だから、今回を機に胸に秘めている大切な思い出を打ち明ける事にした。
「……どんな子、と言われたら大切なものを守る子…だったかな。実は大切な人がいたの。いつも傍で支えていないと壊れちゃうくらい繊細な人。彼とは卒業までの三ヶ月間だけ付き合ったんだけど、彼の両親の離婚を機に引越しちゃって……」
「えっ!大好きな彼と離ればなれになっちゃったの?」
「…うん。いつかまた会えるんじゃないかと思って期待してたんだけど、なかなか会えなくてね。毎日恋しくて、泣いて泣いて……。なかなか思いを断ち切れなかったよ。今でも当時の夢を見たり考えてしまうほど。昨日久々にアルバム出して見ていたら、なんか懐かしいなと思って」
「そっかぁ、愛里紗には大切な人がいたんだね。…で、その初恋の彼ってアルバムのどの辺に写ってるの?」
「ええっ…とぉ。谷崎くんは……あっ、いたいた。この人」
愛里紗は横から身体を寄せて、指でなぞりながらアルバムの中の彼の写真を探して、見つかったと同時にピタリと止めた。
すると咲はアルバムの中の彼を見た瞬間、ハッと目を大きく見開く。
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