第2話 (魔術部を見て、剣術部を知る)

   2話(魔術部を見て、剣術部を知る)



           1

 リアリス剣魔学園/魔術棟・グループCルーム

 「はああぁぁー……ふううぅぅー……はああぁぁー……ふううぅぅー……」

 クライル、深呼吸をして、そして……。

「よーし!」

 と、強く頬【ほお】を叩き、気合いを入れる!


 「はい、それでは、問題用紙をね、配っていきますね。まだ、表に向けないでくださいね」

 カエリア先生、生徒一人一人に、問題用紙を配っていく……。

「はい、みなさま、行き当たりましたか?」

 生徒全員、頷【うなず】く……。

「はい、大丈夫みたいですね。それでは、つづいて、解答用紙をね、配ります。問題用紙同様に、裏向きでね、お願いしますね」

 カエリア先生、生徒一人一人に、解答用紙を配っていく……。

「はい、行き当たりましたか?」

 生徒全員、頷【うなず】く……。

「うん、大丈夫みたいですね。それでは、これより、学力テストをね、開始いたしますが、解答時間はね、一時間です。何か、ご質問はね、ございますか?」


 シーン……。


「はい、特に、ご質問はね、なさそうですので、早速ね、始めさせていただきます」


 クライル、目を閉じながら……。

 (平常心……平常心……だよ)


 「さあ、始めてください!」


 学力テストが始まった……。



           2

 (うーん……)

 クライル、一通り、問題用紙に目を通して、問題の特徴を確認する……。

(……そうだね。すごく基本的なことが、ほとんどみたいだね)


 カエリア先生、ルームを見回る……。


 そして、解答用紙を表にして……。

(さあ、始めるよ!)

 と、クライル、解答に取り掛かる……。


 これより、『●●●』の部分を解答欄に記入しなさい。


 《第一問》セイントローム大陸は、年間を通じて、すごく穏やかな気候である。

      一日[毎日]の気温変化は、昼『●●』度、夜『●●』度である。


(うん、まずはね、お手並み拝見というところだね。えっとね、昼は⒗度……夜は8度……と)


 ……。

 《第四問》金の剣と銀の剣についての特徴である。

      どちらも、パーティー編成の際、学年制限が免除されるが、両者には、一部にお

      いて、僅【わず】かな違いが存在する。

      その違いについて、答えなさい。

      金の剣は、『●●●』を含み、銀の剣は、『●●●』を含まない。


(うん、少し難しくなってきたね。でもね、僕にとってはね、すごく序の口だよ。魔術部……と)


 ……。

 《第八問》剣術部は、ランク・武器は剣である。

      では、魔術部のランク・武器は『●●●』である。


(うん、魔法使いだからね。杖……と)


 ……。

 《第十三問》現在、アフィラードの世界そのものは、すごく平和であるが、過去において、

       あるものの脅威に晒【さら】されていた歴史がある。その正体は、『●●●』

      という、得体の知れない物体である。


(はっ⁉ このタイミングで、なんだね。うーん……すごく難しくなったね。えっと……)

 クライル、目を閉じて、前日のハルフィラとのお勉強を思い出す……。


「えっ、ウソでしょ⁉ そのような歴史がね、あったんですか⁉」

 「ええ、知らなくて、すごく当然だと思うわよ。子供の間はね、発育そのものに、すごく悪影響を及ぼすおそれがあるとね、判断をされて、法律でね、禁じられているのよ。事実、学校でもね、習わなかったでしょ?」

 「うん、そうだね。確かに、大陸が落っこちていくという話はね、すごく狂気ですもんね」

 「ええ、それだけでも、すごく問題なのにね、それに加えて、夢喰いというね、すごく得体の知れない物体……。私【わたし】には、自然現象とはね、とても思えないのよ」

 「人為的な関与がね、あるということですね?」

 「ええ、中央の方々もね、この案件についてはね、すごく手を焼いているわ」

 「ま、まさか、大陸の中にね、裏切り者がいるということですか⁉」

 「それについては、私【わたし】もね、検討をしたわ。でもね、すごくありえないわね」

 「ええ、どうしてですか⁉」

 「あのね、表向きに見るとね、大陸法違反……背【そむ】くような行為はね、大陸反逆罪とみなされて、即刻ね、処刑よ。そして、裏向き……そうね。すごく語弊【ごへい】がね、あるかもしれないわね」

 「うーん……語弊【ごへい】ですか……。すごく棘【とげ】があるような表現ですよね」

 「まあ、当然の反応よね? あのね、これはね、私【わたし】の持論に過ぎないのだけれど、もしも、アフィラード以外の世界があったとしたら……」

 「ええ、つまり、文明が栄【さか】えているところがね、アフィラード以外にもあると、先輩はね、おっしゃりたい訳ですよね?」

 「ええ、すごくロマンを感じない?」

 「う、うぅん……すごく民主的なら、僕もね、すごく納得がいきますが……歴史の観点からいって、違いますよね?」

 「無論、今のはね、冗談よ。クライル君のね、おっしゃっている通りよ。おそらく、人為的な要因でしたら、帝国主義を掲げていると思われているから、近いうち、何らかの動きがあるでしょうね。すごく分かりにくく活動をするでしょうけどね」

 「歴史になっているというのは、これまでの期間と比べると、すごく沈黙期間がね、長くなっているから、そのような解釈にね、なっているだけですね」

 「おそらく、中央の方でもね、すごく分析が進められているでしょうね。分析班というものがね、結成されているみたいですしね。現状、夢喰いと呼ばれる物体はね、突然、身を眩【くら】ませてしまったのよ」

 「ねぇ、ハルフィラ先輩? あのね、すごく不可解なんですが、どうして、当時の中央の方々はね、すごく詳しく調査をね、しなかったのでしょうか? 原因がね、特定できていないということはね、すごく上辺だけの平和ですよね?」

 「さすがはね、クライル君! すごく鋭いわね。ええ、ご説明するわ。あのね、夢喰いの襲来を受けたのはね、下落大陸だけなのよ」

 「あっ⁉」

 「真相究明をしたくてもね、できないのがね、すごく現実なのよ」

 「そ、そんな……」

 「証拠の隠滅……事件の隠蔽……いずれも、悪魔が得意とする戦法よ。所謂、常套手段ね。それらを踏まえてね、帝国主義という結論にね、至っているまでよ」

 「どこかに暗躍している……すごく解【げ】せないですね」

 「まあ、現状はね、中央の方々にね、お任せするしかないわね。無論、私【わたし】たちがね、中央にいるのなら、すごく別でしょうけど」

 「はい、そうですね。どうやら、答えはね、ひとつみたいですね!」

 「うふふっ。ええ、クライル君、すごく物分かりがよろしいわね」

 と、ハルフィラ、クライルの頭をなでる……♥

 「えへへ♥」


 クライル、ハルフィラとのお勉強をしていた際の回想を終了……。

 クライル、目を開き……。

(うん、夢喰い……だね。やっぱり、過去で終わらせちゃいけない気がする……だって、現在進行形の可能性がね、すごく高いと思うからね)


 ……。

 《第二十一問》剣には、全部で、七つの属性がある。

        『地』『水』『火』『風』の四つの属性……。

        では、残りの三つの属性は、『●』『●』『●』である。


(うーん……後半の問題になると、すごく本格的なテストになってきたね。ふうぅー……先輩にね、教わっていて、すごく良かったよ。えっとね、光……闇……空……と)


 《第二十二問》では、七つの属性の発動条件について答えなさい。

        『●●に●●を●●する』。


(……そうだね。ここがね、魔術部とは、すごく大きく異なるところだよね。うん、ホント、すごく先輩に感謝だね。剣に属性を付与する……と)

 《第二十三問》一般的に、剣士の攻撃スタイルは、火力の高さによって、左右されますが、

        では、魔法使いの攻撃スタイルは、『●●』の高さによって、左右されるで

        しょう?


(うん、生徒によってはね、分かんない人もいるかもしれないね。専門分野じゃないからね。幸い、僕はね、心配いらないよ。念のため、先輩にね、教わったからね。えっと、魔力……とね)


 《第二十四問》ランクにおける、属性の所持数について。

        属性の所持数は、ランクによって、限界値があります。

        白の剣は、一属性。緑の剣は、二属性。銅の剣は、三属性。

        銀の剣は、四属性。

        では、金の剣は、『●属性』でしょう?


(ああぁぁー……このようなトラップ問題、絶対、一問はあるよね? えっとね、五属性と書きそうなところだけど、正解はね、六属性だよ)


 ……そして。


(よーし! いよいよ、最後の問題だね)


 《第三十問》ランクにおける、最高ランクは何でしょう?

       『●●●●』


(うん、おそらく、全員の憧れ……プラチナ……と)


 ―そして。


 「はい、これまで! みなさん、ペンを置いて、解答用紙を裏返しにしてください!」

 (ふううぅぅー……終わったああぁぁー……)


 カエリア先生、一人一人の解答用紙を回収していく……。


 「はい、これより、本日の授業はね、終了です。なお、テスト結果はね、明日、剣術棟のエントランスにある掲示板にね、貼られていますので、各々、ご確認をね、お願いします。それでは、本日はね、お疲れさまでした」

           3

 「はあぁー……すごく疲れた」

 クライル、剣術棟の三階にある、休憩室で寛【くつろ】ぐ……。

「あっ、冷たぁ⁉」

 「うふふ、ご苦労さま♥」

 ハルフィラ、クライルの頬【ほお】に、ドリンクを当てる……♥

 「ああ、先輩⁉ ありがとうございます」

 「うふっ♥ それでは、無事に、テストを終了したことをね、労【ねぎら】って、乾杯!」

 クライルとハルフィラ、ドリンクで軽く祝杯をあげる……。

 ……。

「それでね、いかがでしたかしら?」

 「はい、先輩のおかげでね、無事にね、事なきを得ることができました。まあ、終盤はね、すごく難しかったですけど」

 「うふっ。さあ、問題用紙をね、見せてごらんなさい。答え合わせをね、するわよ」

 「はい、よろしくお願いします」


 クライル、問題用紙をハルフィラに見せて……そして、解答チェックをする……。


 ハルフィラ、クライルの頭をなでながら……♥

 「クライル君、おめでとう♥ すごく頑張ったわね。おそらく、二十九点ね」

 「ああぁぁー……すごく残念……ねぇねぇ、先輩⁉ どこで、間違ったのかな?」

 「二十四問目よ」

 「ええ、それって……⁉」

 「うふっ。どうやら、策に溺【おぼ】れてしまったようね。でもね、そんなにね、落ち込まないでよ。今後の剣士生活においてね、すごく重要なことよ。そもそも、これはね、引っ掛け問題よ。すごく悔しいでしょうけど、過去を悔【く】やんでもね、しょうがないわ。反省をするだけして、現在進行形の段階にね、決して、引き摺【ず】らないこと……そして、未来にね、活かしていくのよ」

 「はい、分かりました! せ、先輩……え、えっと、その……」

 「うふっ、いいわよ。私【わたし】の胸にね、飛び込んできなさい♥」

 「は、はーい♥」


 クライル、ハルフィラに飛び込む……。

 すごくラブラブである……♥

 クライルとハルフィラ、休憩室に、人がいないことを確認済みである……。


           4

 魔術棟/三階(休憩室)[ロクメ/アルヴィッチ]。

 「さあ、解答のチェックだよ」

 「うん、そうだね。すごくドキドキするね」

 「うう……ゴクンッ(呑)」

 「ロクメ君、落ち着いて。結果はね、変わらないんだから、今さら、焦ってもね、しょうがないよ」

 「い、いやぁ⁉ お、俺はさ、すごく至って、冷静だよ」

 「ウソをつかないの……。すごく焦っているじゃない」

 「う、うん……やっぱり、分かっちゃう……」

 「うん、すごく残念だけど、全く隠せてないよ。まあ、幼なじみなんだから、僕の前ではね、ありのままのロクメ君でね、いてほしいかなぁ……」

 「そ、そうだね……。ありがとう。俺のこと、すごく励ましてくれて……」

 「ふふっ、よかった……」


 ……そして。

 時間を少しおいて、解答のチェックを行【おこな】う……。

 「うーん、正解……正解……」

 「やっぱり、ロクメ君……お兄さんのこと、すごく意識してるよね」

 「ああ、そうだね。でもね、これもね、宿命なの。兄貴の顔に、泥を塗【ぬ】るようなことだけはね、絶対、避けなきゃいけないからね。それに、俺自身としてもね、今後の学園生活において、生き恥を晒【はら】す事態にね、すごくなり兼ねないからね。これはね、兄貴だって、通った道だよ。すごく厳しい茨【いばら】のような道だったと思うの。弱音なんて、吐いちゃいけないの!」

 「ねぇ、ロクメ君? 無理、していないよね?」

 「ええ、どうして、そんなことをね、聞くの?」

 「当然でしょ? 幼なじみであり、友人の心配するのはね、すごく自然なことでしょ?」

 「ああ、そういうこと……だね。うん、心配いらないよ。健康管理は、怠【おこた】っていないからね。そもそも、全力でね、挑めなくなっちゃうからね。すごく気を遣っているよ」

 「だったら、僕からはね、以上だよ」

(……そうだね。すごく懸念をされていた健康管理についてはね、大丈夫みたいだね。もし、粉骨砕身【ふんこつさいしん】なんてこと、していたら、どうしようかなぁと、思っていたからね。ひとまず、一安心というところかなぁ……。しかし、懸念材料はね、もうひとつ、あるんだよね。本人にね、聞く訳にもいかないしね。お兄さんはね、果たして、どのように、おもっているのかなぁ……? うぅー……ホントは、そこがね、すごく肝心なところなんだけどね)

 ……。

 「あちゃああぁぁー……。覚えてないな……」

 「ねぇ、それって、もしかして、引っ掛け問題のところ……」

 「うん、そうだね。二十四問目のところだね」

 「おそらく、他の生徒もね、すごく悩んでいたところだと思うよ。事実、僕だってね、すごく悩んだもん」

 「うーん……策に溺【おぼ】れたという、結果にね、なっていないことを祈るしかないね」

 「えぇっと……今の発言から、お察しするにね、勝負に出たの⁉」

 「うんうん……すごく素直にね、答えたよ。そもそも、プラチナランクはね、すごく別格な扱いだから、ランクそのものがね、すごく大きな壁があるはずなんだよね。したがって、銀と金ではなく、金とプラチナのレベル差でね、解答させてもらったよ」

 「うん、すごく説得力のある根拠だと思うよ。満点……取れるといいね」

 「うん……そうだね」

 (親の七光りならない、兄の七光り……ね。ホント、すごく一長一短だよね)

 「ねぇ、俺の心配をさ、してくれるのはね、すごく有り難【がた】いんだけど、アルヴィッチ君はさ、大丈夫だよね?」

 「ええ、僕……⁉」

 「解答チェックをしたところ、すごく心配なんだよね」

 「ええ、そうかなぁ……⁉ 人並みにはね、出来てると思うよ」

 「すごく根拠のない……自身だね(苦)」

 「うーん……正直、終盤はね、すごく苦労を強いられたかなぁて……」

 「ああぁぁー……やっぱり、すごくセオリー通りの展開だね」

 「まあ、ひとまず、お互いにね、すごく全力を尽くしんだから、ここはね、素直に受け入れようよ」

 「ふふっ、そうだね。まあ、そういうことにね、しておくよ」



           5

 「ただいま」

 クライル、二日振りに自宅に帰る……。


 すると、AIロボット……。

 「じいいぃぃー……」


 「うん、何なの、その目……すごく何かを、言いたげな顔をしてるね」

 「いえいえ、とんでもない。ご主人さまが、昨日はね、超お楽しみだったなんて、夢にも思っていませんよ」

 「まったく、どうして、AIの君がね、嫉妬【しっと】をしているの?」

 「嫉妬【しっと】なんて、超心外だね。僕はね、ご主人さまの幸せをね、超願っているんだよ!」

 「うーん……とてもそのようにはね、見えないな……。僕がね、お留守にしていたことをね、すごく寂し気にしているようにね、見えたんだけど、そうじゃなかったの⁉」

 「ああ、そうだよ! 超寂しかったんだよ! 僕の任務はね、ご主人さまのお世話なんだからね。一日、超退屈だったの!」

 「ごめん、ごめん……。そんなにね、膨れないでよ。でもね、先輩との幸せをね、願っているのなら、少しはね、妥協をして欲しいなぁ……」

 「うん、超矛盾だらけの発言だったね。でもね、少しずつ、移行して欲しいかなぁ……。超突然じゃなくてさ」

 「うーん……すごく難問を要求してくるよね(苦笑)」

 ……。

 「そういえば、先輩はね、どうしたの⁉ どうして、ご主人さまはね、午前中だけで、帰って来ちゃったの⁉ も、もしかして、体調不良なの⁉ ご主人さま、早く休みましょう!」

 「ストオオォォプウウゥゥ! あのね、一度にね、言わないでくれない⁉ すごく頭がね、パンクをしちゃうから!」

 「あっ⁉ これはね、失礼しました」

 「おほんっ! あのね、先輩はね、午後も、授業がね、あるの。そして、一年生はね、学力テストだけだから、午前中だけでね、終了なの。それに、僕はね、すごく元気だよ」

 「おおぉぉー……」

 「うん、今度はね、何⁉」

 「いえ、全てのご質問にお答えいただき感謝いたします」

 「あ、あははぁ……。あのね、僕ね、すごく疲れているから、少し昼寝をしてもいいかな?」

 「ああ、そうだね。お疲れさまです。超頭を使いましたからね。よーし、ひとまず、ご主人さまはさ、寝室で、休んでなよ。夕食の時間にね、起こしに来るからさ」

 「うん、それじゃあ、お言葉に甘えてね、休ませてもらおうかなぁ……」


 クライル、寝室に向かっていく……。


 「さあ、腕に縒【よ】りをかけてさ、超豪勢なディナーといこうじゃないの!」

 AIロボット、すごく気合いが入っていた……。


 ―そして、翌日!


           6

 リアリス剣魔学園/剣術棟(エントランス)。


 クライル、掲示板に貼られている、学力テストの結果を確認中……。

 なお、ハルフィラも、同行している……。


 「うーん……すごい人ですね。まあ、すごく当たり前のことですけど……」

 「うふふっ」

 「あ、あった! うわあっ⁉ 二十九点……!」

 「うふっ、おめでとう♥」

 「えへへ♥ ありがとうございます♥」

 ハルフィラ、クライルの頭をなでる……♥


 その後、三階の休憩室に移動……。

「ふうぅー……ひとまず、すごく幸先の良いスタートということで、よろしいんですよね?」

 「ええ、すごく順調な滑り出しよ。したがって、次のステップについてね、説明をするわよ」

 「はい、よろしくお願いします!」

 「うふふっ。すごくハイテンションね。すごく結構なことだわ」

 「ねぇ、僕からも、ご質問ね、よろしいですか?」

 「ええ、言ってごらんなさい」

 「あのね、先輩ね、半年で、銅の剣に昇格して欲しいとおっしゃっていましたよね? したがって、緑の剣というのは、七カ月間がね、すごく理想的なんですかね?」

 「そうね……。分割をしたのね。ええ、その考え方でね、すごくよろしいのだけれど、おそらく、緑の剣の昇格にはね、それほどの時間はね、要【よう】さないでしょう。それより、銅の剣のためのランクアップを想定してね、すごく足早【あしばや】にね、昇格を考えたいわね」

 「そんなにね、早く……可能なんですかね?」

 「心配しないで。私【わたし】にね、任せておけば、全く問題はね、ないわ。ひとまず、緑の剣のランクアップについて、今夜ね、打ち合わせをしましょう」

 「はい、ご期待に添えられるようにね、全力を尽くさせていただきます!」

 「いえ、感情のコントロールもね、教えておくわ。燃え尽き症候群……もっとも、恥じるべき事態よ」

 「うぅん……すごく奥が深いですね」

 「クライル君、落ち着きなさい♥」

 「はあぁい♥」

 ハルフィラ、クライルの背中を、両手で優しく添える……♥


 ※ 前述のとおり、一年は、五二二日である。

   一カ月は、十八日~二十日である(なお、二十九カ月=一年)。



           7

 クライル、ハルフィラと別れ、グループCのルーム……。

 「はい、みなさま、ご自身の学力テストの結果はね、いかがでしたしょうか? なお、十点未満の方はね、補習授業となりますので、予【あらかじ】め、ご了承ください。さあ、これより、属性の付与について、ご説明をしたいと思います。これから、みなさんにはね、七つの中から、おひとつ、属性をね、選択していただきます。特に、これといった縛【しば】りはね、ございませんので、どのような属性をね、選択していただいても、結構です。しかし、得手不得手【えてふえて】がね、存在しますので、どうか、慎重にね、お選びください。本日はね、訓練場をね、解放いたしますので、実際にね、ご使用なさって、検討してください。さあ、それではね、訓練場にね、ご案内いたしますね」


 カエリア先生、生徒たちを、訓練場に案内(先導)する……。


 移動中……。

 クライル、ハルフィラと別れる前のことを考えていた……。


 「あのね、ハルフィラ先輩⁉ この後、属性の付与を選択しなきゃいけないんですよね?」

 「ええ、そうね。白の剣ですから、ひとつね」

 「えっと、何か、オススメの属性はね、ありますか?」

 「うーん……そうね。すごく難しい問題ね。属性にはね、得手不得手【えてふえて】がね、存在しているのよ。本人の性格、特徴……すごく総合をしてね、決断をしなきゃいけないことなのよね。一口【ひとくち】に、言葉だけでね、決められるものでもないのよ。攻撃、防御、回復、支援、妨害……すごく様々なポジションがね、存在しているのよ」

 「そうですよね……。こればかりはね、すごく無理がありますよね」

 「そうね。これに関しては、私【わたし】がね、干渉をすることはね、できないのだけれど、ひとまず、アドバイスだけはね、伝えておくわね」

 「ごめんなさい。僕ね、先輩にね、頼ってばかりで……」

 「ご謙遜しないで。信頼をするというのはね、とても大切なことよ。それに、私【わたし】の背中だって、あなたにね、守ってもらうのよ。ねっ、すごく普通のことでしょ⁉」

 「あ、ありがとうございます!」

 「うふふっ。さあ、それでは、お伝えさせてもらおうかしら?」


 ハルフィラ、クライルの耳元で囁【ささや】くように……。


 ……。

 「うん! ひとまず、色々とね、試してみよう。……そうだね。すごく楽しまなきゃいけないところだよね」


 七階にある、訓練場に到着……。

 「さあ、それでは、みなさん! これより、しばらく、自由行動ですので、試行錯誤をしながら、ご自身に合った属性をね、選択してくださいね。選択がね、完了しましたら、私にね、お声を掛けてくださいね。合成いたしますので。あのね、私から、ひとつ、アドバイスをしておきますね。みなさんはね、すごく優秀です。したがって、すごくリラックスをして、行動をなさってくださいね」


 生徒各々、返事をする……!


「うん、すごくいい顔をしていますね。それでは、始めてください!」



           8

 各々、属性を宿す玉をもって、行動を開始する……。

 そして、クライルは……。

 (うーん……水はね、回復メイン……火はね、攻撃メインといったところだよね。まあ、すごく抽象的な表現なんだけどね)


 クライル、七つの属性の玉を持って、個室に移動をする……。

 ※ 訓練場には、大部屋/個室/メンタル室……様々なエリアがある


 クライル、個室に入室をする……。

「うん、ひとまず、個室ということで、目撃確率はね、回避できるよね。無論、デメリットはね、他の生徒の行動がね、確認できないことだけど……。まあ、僕にとって、そこはね、あまり、重要じゃないんでね。それより、隠し玉をね、持っていることの方がね、すごく重要なの」

 クライル、少しの間、瞑想をする……。


 一方、待機をしている、カエリア先生……。

 「さあ、みなさん、どのような属性をね、選択するのかな? うん、すごく楽しみだね。でもね、間違っても、自身をね、過信しないようにね」

 期待と不安が、とても交錯している様子であった……。


 個室(クライル)。

 「さあ、始めよう! うーん……そうだね。すごく当たり前のことなんだけど、七つの属性、各々にね、すごく強みが存在する……したがって、自身の希望の属性をね、選択するのが、すごくベストだよね。しかし、希望=得手じゃない! 加えて、これはね、遊びじゃない! 僕の今後の人生にね、すごく関与すること……したがって、すごく賢明な判断がね、必要不可欠だね。そうだね……。すごく現実的にね、考えてみよう。強みがあるということは、無論ね、弱みだって存在する……。おそらく、実技テストにおいて、今回の選択はね、すごく命運を握るだろうね。うん、白の剣なので、ひとつの属性しか選択できないのだから、なおのこと、すごく慎重に判断をしなきゃいけないよね。…………(目を閉じる)。……そうだね。実技テストはね、単独行動だったよね。単独行動の際、求められるのはね、すごくフレキシブルな対応……言うまでもないよね。したがって、すごく安易な選択はね、命取りになり兼ねないよね。うん、強みを犠牲にしてでも、弱みを軽減するという、判断が求められるよね。したがって、僕の導き出した答えはね、バランスを前提に考えた手法……判断ミスでないことをね、祈るしかないよね」


 そして、クライル、準備に入る……。


「リスクを低下させつつ、最大限のベネフィットを得る……うん、この作戦でね、いくよ!」


 クライル、闇属性の玉を仮合成する……。

「うん、すごく手間な手法だけど、後悔だけはね、したくないからね。納得のいくまで、やらせてもらうよ」


 クライル、剣を構える……。

 そして、

「フウウーン!」

 軽く、一振り……!

「1秒25……うん、すごく当然のことだけど、すごく速いよね。重要なのはね、そこじゃない! さあ、いくよ」

 クライル、自身の作戦を試す……。

「フウウーン! ハアアーン! クウウゥゥー! サアアァァー! エエイイィィー! フヌウウゥゥン!」

 なんと、クライル、残りの六つの属性を、闇属性の際、行【おこな】った、一振りを全て、実践する(所謂、一通り、行【おこな】う)。

「はああぁぁー……さすがに、すごく疲れるよね。でもね、すごく地味な実践だから、すごく目立ちにくいよね」

 クライル、自身に言い聞かせる……。

「地属性・1秒81、水属性・1秒82、火属性・1秒80、風属性・1秒78、光属性・1秒81、空属性・1秒80。うん、思っていた通り、ほとんど、同じ速さだね。しかし、すごく微少【びしょう】だけど、差異があるよね。うん……さあ、同様の方法でね、残り六回、行【おこな】うよ」


 どうやら、クライル、残りの六つの属性も、闇属性同様の手法を行【おこな】うようだ……。


「火属性……火力が高い。所謂、物理攻撃だね。さあ、パワーをね、測定するよ」

 クライル、一振りをして、パワー(火力の高さ)を測定する……。


「地属性・92、水属性・90、風属性・90、光属性・89、闇属性・90、空属性・91。そして、火属性はね、113……と。うーん、なるほど、90前後だね」


「風属性……短時間における、回転速度の回数。さあ、測定開始だよ」

 クライル、一振りをして、回転回数(一度における)を測定する……。


「地属性・21、水属性・23、火属性・22、光属性・22、闇属性・24、空属性・23。そして、風属性はね、47。うん、約二倍だね」


「水属性……攻撃対象者の生命力を自身に吸収。まあ、ある意味、回復だよね」

 クライル、一振りをして、吸収率(回復量)を測定する……。


「地属性・17%、火属性・16%、風属性・16%、光属性・17%、闇属性・16%、空属性・18%。そして、肝心の水属性は、35%。ふふっ、すごく魅力的だよね」


「光属性……魔力が高い。所謂、魔法攻撃だね。無論、魔力に関してはね、魔術部に分がある。反対に、火力に関してはね、剣術部に分がある。まあ、すごく当然のことなんだけどね」

 クライル、一振りをして、マジックパワー(魔力の高さ)を測定する……。


「地属性・39、水属性・40、火属性・39、風属性・39、闇属性・38、空属性・39。そして、光属性はね、87……と。うーん、二倍以上だね」


「地属性……防御力の高さ。所謂、物理防御だね。うん、ここでいう、物理防御とは、剣の重さ硬さらしいね」

 クライル、一振りをして、重力(剣の重さと硬さ)を測定する……。


「水属性・55、火属性・54、風属性・54、光属性・54、闇属性・53、空属性・54。そして、地属性の重さはね、90……。うん、すごく重いよね」


「さあ、ようやく、残りひとつだね。空属性……魔法防御力の高さ。攻撃対象者の生命力の圧縮……要約すると、回復を鈍らせる効果……ね。うーん、他の属性と比較すると、すごく分かりにくい属性だね。でもね、妨害としてはね、すごく最適な属性だね」

 クライル、一振りをして、鈍らせ効果(回復鈍化)を測定する……。


「地属性・15%、水属性・16%、火属性・14%、風属性・15%、光属性・15%、闇属性・15%。そして、注目するべき、空属性の鈍化率はね、30%。うん、約二倍だね。これはね、使用者がいると、すごく厄介な存在になりそうだね」


 ……そして。


「うん、ひとまず、一通りの属性チェックはね、終了。うん、すごく収穫があったよね。さあ、ここからがね、すごく重要だよ」


 クライル、測定結果を照らし合わせる……。


「…………(考)。うん、第一の着目点はね、各々の属性の中から、主属性を除いた属性……所謂、二番目に強い属性だね。確認したところ、水属性がね、三つと、最も多い……そして、火属性と光属性はね、ひとつもない……と。しかし、もうひとつの第一の着目点が、存在するんだよね。うん、言うまでもなく、最も弱い属性だね。うーん……闇属性、三つのアキレス腱。すごく対照的に、空属性はね、ひとつもない……ね。ひとまず、三つのアキレス腱を抱えている闇属性についてはね、選択肢から、除外だね。うん、すごく看過できないからね。さあ、どうするかなぁ……」

 クライル、しばらく、目を閉じて、深く考える……。

 ……数分後。

「うん、決めた! 水属性と空属性の二択だね。うーん……ホントはね、三つの秀【ひい】でている、水属性にね、インプットしたいところなんだけど、リスク要素のない空属性が、僕としてはね、すごく理想的だね。やっぱり、どんなにね、強みが多くても、ひとつの弱みでね、雲散するおそれがあるからね。うん、やっぱり、不安と背中合わせはね、すごく避けたいよね。したがって、空属性にね、決まりだね!」


 クライル、空属性の玉に、すごく力強く手を置く(決意の表れである!)……。



           9

 クライル、カエリア先生の元に……。

 「お待たせしてしまって申し訳ございません」

 「いいえ、お気になさらないでください。どうやら、すごく葛藤【かっとう】をしていたご様子ですね」

 「ふふっ。さすがですね」

 「うふっ。これでも、教員ですからね」

 「そうですね(微笑)」


 クライル、空属性の玉を、カエリア先生に渡す……。

 「ふふっ、空属性ですね。それでは、合成いたしましょう」


 カエリア先生、クライルに詠唱をする……。

 「空の女神を、この者に、空のご加護を与えたまえ!」


 すごく明るくなり、空の閃【ひらめ】きが、クライルの全身に降り注ぐ……!

 (うわあぁ……ホントだ! 身体全体にね、すごく力が漲【みなぎ】っていく‼)

 クライル、目を閉じながら、効果を実感していた……‼


 「はい、合成はね、無事に、成功いたしました」

 「はい、ありがとうございます」

 「ふふっ。ホント、すごくご丁寧ですよね」

 「ええっ⁉」

 「おほんっ! これはね、失礼! こちらの独り言ですので、どうぞご了承ください」

 「いえ、お褒めいただいてね、すごく感謝いたします」

 「うふっ。それでは、本日の授業はね、これで、終了ですので、補習授業がないのでしたら、お帰りになられてね、構いませんよ」

 「あっ、はい! そうなのですね。本日はね、お疲れさまでした」

 クライル、カエリア先生に、頭を下げて、訓練場を退出する……。


 ―そして、校門前。

「あっ、ハルフィラ先輩⁉」

 「うふふっ。そのご様子ですと、すごくご納得のいく答えがね、導き出せたようね」

 「はい! 先輩の意見をね、すごくご参考にしながら、僕なりにね、考えてみました」

 「あら、それはね、すごくお聞きしてみたいわね」

 「はい、もちろん、お伝えします」

 クライル、一呼吸を置いて、ハルフィラに飛び込む……♥

 「あらあら、相変わらずの甘えん坊さんね♥」

 と、ハルフィラ、クライルの頭をなでながら……♥

 「えへへ♥」

 「さあ、早速、自宅に戻ってね、作戦会議をね、始めるわよ♥」

 「ふふふ、はああぁぁい♥」



           ⒑

 夕暮れ時……。

 ハルフィラの自宅……。

 「なるほど……ね。すごくバランスをね、重視したのね。ええ、すごく賢明な判断よ」

 「えへへ、すごく喜んでいただけて、すごく安心しました」

 「それに、悟られないように、行動をするという点はね、すごく素晴らしいわね」

 「ホ、ホントですか⁉」

 「ええ、ホントよ。実のところ、相手の行動がね、読めないのはね、それほど、重要ではないのよ。否が応でも、詮索【せんさく】をすることは、不可能ではないからね。しかし、悟られないようにするというのは、対照的にね、すごく困難なことよ。ご自身の言動でね、左右されてしまうものですから」

 「確かに、そうですよね? 相手に悟られるということは、同時にね、すごく弱みを曝【さら】け出すという、捉え方もね、できますもんね」

 「うふふっ。どうやら、私【わたし】のね、予想以上の仕上がりみたいね。うふっ、すごく嬉しいわ」

 「えへへ、先輩、ありがとうございます」

 「いえいえ、お礼を申し上げたいのはね、私【わたし】だわ。すごく俯瞰的【ふかんてき】に捉えているみたいですので、すごく先輩……いえ、すごく恋人冥利【みょうり】にね、尽きるわ」

 「はい、これからもね、すごく善処【ぜんしょ】します!」

 「うふふっ。すごく頼もしい限りね」

 ……。

 「へえぇー……そうですか? 先輩も、すごく目立たないように、行動を……ね」

 「ええ、私【わたし】がね、ランクアップの際、行【おこな】った手法はね、すごく地味で目立たない戦術でしたのよ」

 「確かに、形はね、違っても、あまり、派手に事【こと】を行【おこな】ってしまうと、すごく悪目立ちをするというおそれがね、ありますもんね。たとえ、本人にね、そのような意思がないのだとしても、ランクアップする過程において、すごくマイナスですもんね」

 「そうね。でもね、半分、正解でね……半分、不正解……といったところかしらね」

 「えっ⁉ それはね、どういうことですか⁉」

 「うふっ。まあ、私【わたし】のすごく個人的な主観がね、入っているから、不正解といっても、少し違うのかもしれないのだけれどね」

 「ああぁぁ……せ、先輩のですか⁉」

 「ええ、改めてね、言わせてもらうわ。あのね、申し上げるまでもなく、私【わたし】はね、クライル君、一筋よ。もしも、私【わたし】たちの関係にね、妨害する者がいたとしたら、どのような人物でもね、容赦【ようしゃ】はしないわ」

 「え、えへへ♥ あ、改めて、おっしゃられると、すごくむず痒【がゆ】いですね♥」

 「うふふっ、そうね♥ でもね、言葉にしないとね、すごく伝わらないケースだって、あるのよ。はああぁぁー……えっと、実はね……」


 ハルフィラ、クライル、ある悩みを打ち明ける……。


 「えっ⁉ そ、それはね、ホントですか⁉」

 「ええ、ホントもホント……すごくホントよ! 幾重【いくえ】にもわたってね、告白をされてきたのよ!」

 「はっ、ははは……や、やっぱり、そうですよね? 先輩……すごく頭が良くて……それに、金の剣……ですもんね。すごく自然なことですよね」

 と、クライル、少し震えた声で、ハルフィラに話していた……。

「えっ⁉ ハルフィラ先輩……」

 と、ハルフィラ、クライルを抱擁【ほうよう】しながら……。

 「心配しないで。この件について、あなたがね、気に病む必要はね、全くないのよ。全てね、お断りをしているのですからね」

 「先輩……」

 「それに、自己否定はね、すごく感心しないわね。私【わたし】はね、そのような指導をね、行【おこな】った覚えはね、ないわよ」

 「で、でも……僕と先輩だと、やっぱり、釣り合わないのはね、すごく疑いようがない事実ですよ」

 「コラッ!」

 ハルフィラ、クライルの頭を、優しくポンッ!

 「い、痛っ……」

 「私【わたし】の大好きな、クライル君の悪口はね、たとえ、クライル君、本人であってもね、絶対にね、許さないわよ」

 「ご、ごめんなさい……僕ね、また……」

 「うふふ♥ ご理解してくれるだけでね、構わないのよ」

 「はい……先ほど、僕のこと、一筋だって、おっしゃってくれましたもんね。うん、先輩にね、すごく失礼でしたね」

 「ええ、よろしい♥」

 「はぁい♥」


 ハルフィラ、しばらく、クライルを抱き締める……♥


 「うふふっ。どうやら、正気をね、戻してくれたようね」

 「はい、すごくお騒がせしました」

 「おほんっ! あのね、これからの学園生活おいてね、すごく懸念材料があるから、お伝えしておくわね」

 「は、はい……」

 「えっとね、世の中にはね、すごく情けない者がね、いるものなのよ。そう、あなたにね、腹いせをする者がね……」

 「そ、それはね、やっぱり……嫉妬【しっと】ですか……⁉」

 「そうよ。ねっ、すごくみっともないでしょ⁉ 一応ね、念のため、プロテクトをね、かけておくわね」

 「はい、ありがとうございます。ホントに、お世話になります」

(早く、先輩にね、相応【ふさわ】しい、実績をね、上げなきゃ!)

 「じぃー……」

 「ええ、先輩⁉ どうかなさいましたか⁉」

 「いえ、すごく顔にね、出ているわよ。ホント、昔から、全く変わらないわよね」

 「えへへ♥ やっぱり、先輩にはね、叶わないですよ」

 「うふふっ♥ ご謙遜をね、しないの♥」

 と、ハルフィラ、クライルをなでながら、語る……♥

 ……。

「そうね……。属性合成の際、実践をしてくれているみたいですので、私【わたし】から、お話をすることはね、何もないご様子ね」

 「ええっと……つまり、ランクアップについても、同様の手法でね、取り組んでいくということですか⁉」

 「ええ、すごくお察しがよろしいわね」

 「ああ……(安堵)」

 「ええ、ひとまず、プランをね、変更するわよ」

 「ええ、変更しちゃうんですか⁉」

 「いえ、そんなにね、大それたものではないわ。すごく段階的な手法にね、変更をするだけよ。所謂、その都度、更新をしていくという感じかしら? ひとまず、あなたの考えることはね、緑の剣のランクアップについてよ。他のことはね、何も考えなくていいわ」

 「はい、一点集中ですね」

 「うふふっ、そうね♥」

 ……。

「ひとまず、目先はね、単独テストの対策にね、集中なさい」

 「はい、万全の準備をしてね、本番にね、臨みます!」

 「ええ、どうやら、すごく杞憂【きゆう】でしたわね。…………(目を閉じる)。ねぇ、クライル君?」

 「はい、何でしょうか?」

 「あのね、ひとまず、単独テストの結果について、お伝えしておくわね」

 「ええ、まだね、これから……ですよ!」

 「うふっ、ごめんね。すごく語弊のある発言でしたわね。えっとね、私【わたし】がね、申し上げたいのはね、単独テストの成績によって、今後のランクアップができる選択数がね、増減することについてよ」

 「ああっ⁉ 資格みたいなものですね……」

 「ええ、あの時はね、すごく先走っていたので、すごく申し訳なかったわね」

 「いえ、先輩だけのね、責任ではないですよ。あの時はね、僕だって、すごく先輩のことをね、焚【た】きつけていたようなものですし、そこはね、お互いさまということにね、しましょうよ」

 「うふっ、そうね。クライル君、ありがとね♥」

 「えへへ♥ いえいえ♥」

 ハルフィラ、クライルの頭をなでる……♥

 ……。

 「そうね。学園の規約がね、あるので、テスト内容はね、お話しすることはね、できないのだけれど、ひとまず、可能な範囲でね、お伝えしておくわね」

 「はい、お願いします」

 「あのね、ひとまず、スタミナをね、つけておきなさい」

 「はい、承知しました! 先輩の彼氏として、すごく恥じない姿をね、お見せします‼」

 「嫌【いや】だわ。すごく照れてしまうわね」



           ⒒

 すっかり、暗くなり……。

 「パーティー対策……ですか?」

 「ええ、クライル君の成績にもね、すごく響いてくるので、すごく重要なことなのよ」

 「ええっと、つまり、あれですね。連帯責任ということですね」

 「ええ、要約をすると、そのようになるわね」

 「それはね、すごく心配ですね」

 「ええ、ひとまず、できる範囲のね、見極め方をね、伝授しておこうかしら?」

 「は、はい……お願いします」

 「あのね、基本的にはね、相手から、歩み寄ってくるような人物はね、男女問わず、すごく地雷よ」

 「ふむふむ(メモメモ)。利用しようとする感覚ですね」

 「おそらく、クライル君の学力テストはね、上位でしょうから、すごく恰好【かっこう】の標的になる可能性が高いわね。そして、その相手がね、下位であれば、なおのことね」

 「なるほど(メモメモ)。パーティー以前の問題ですね。手柄をね、横取りするような連中とはね、とても組めないですよね」

 「ええ、実際問題、意図するようにね、すごくあからさまな言動を取るわ」

 「ひいぃー……すごくおっかないですね。正直、テスト関係なく、関わりたくないですね」

 「でもね、だからといって、お断りするのはね、すごく簡単なことではないわ」

 「あっ、そうですよね? すごく印象が悪くなってしまいますよね」

 「まあ、そういうことよ。したがって、誤解を招かない、すごくご納得ができる、お断りの方法をね、伝授しておくわね」

 「はい、それはね、是非、お願いします!」


 ハルフィラ、クライルに、すごく被害の少ない断り方を伝授する……。


「はい、確かに、それがね、すごく無難な断り方ですね。実践してみます」

 「ええ、すごく慎重にね、行動をするのよ」

 「うーん……そうですね。そうなると、やっぱり、成績上位の方がね、すごく理想ですよね」

 「いえ、それはね、違うわ」

 「ええっ⁉ ダメなんですか⁉」

 「まあ、必ずしもという訳ではないのだけれど、すごく自制心の強い者がね、いるのもね、すごく事実としてあるのよ。したがって、下位の者とはね、すごく違ったリスクがあるのよ」

 「うわあぁー……人との関係はね、すごく複雑なんですね」

 「まあ、役割分担という観点において、すごく揉めやすいのよね」

 「ねぇ、先輩? この様子ですと、魔術部との共同作業の際はね、ものすごく揉めそうですよね」

 「ええ、火力と魔力の連合軍ですからね。でもね、今はね、目先のテストのことだけをね、考えなさい。先ほども、お話をしたように、その都度ね、考えていくことにしましょう」

 「はい、承知しました。無論、すごく性格もね、重要なんですよね」

 「ええ、可能でしたら、お伝えしたようにね、探りを入れてみなさい。必ず、スキはね、あるわ」

 「はい、余裕があれば、行【おこな】ってみることにね、します」


 そして、夜通し、対策会議は、つづいていく……。



           ⒓

 魔術棟/訓練場(七階)[ロクメ/アルヴィッチ]。


 ちょうど、クライル達が、剣術棟で、属性合成を行【おこな】っていたタイミングで、同様のことが、行【おこな】われていた……。


 ロクメとアルヴィッチ、二人部屋で、実践中……。


 「ねぇ、ロクメ君? 少しね、構わないかな?」

 「ええ、アルヴィッチ君⁉ 藪から棒にね、どうしたの⁉」

 「うんうん……すごく自然な成り行きだと思うんだけどね」

 「ええ……」


 アルヴィッチ、すごく真剣な表情で……。

 「ねぇ、ロクメ君⁉ どうして、喜ばないの⁉」

 「ええ、喜ぶって……」

 「ああー……すごく察しが悪いよね。ねぇ、学力テスト、満点だったんでしょ⁉」

 「う、うん……そうだよ。満点だったよ」

 「どうして、喜ばないの?」

 「すごく喜んださ! 心の中でね……。でもさ、表にはさ、出せないよ」

 (ホント……素直じゃないよね)

「ねぇ、この際ね、すごくはっきり、言わせてもらうけど、テストの結果にね、お兄さんはね、無関係でしょ⁉ どのような事情であれ、ロクメ君自身がね、努力した結果だよ」

 「うん……そうだね。すごく努力をした結果だろうね」

 「だったら……」

 「あのさ、そんなことはさ、すごく分かってるんだよ。俺だって、バカじゃない。でもさ、世間はさ、それを許さないんだよ!」

 「いい加減にね、しなよ!」

 「うっ⁉」


 アルヴィッチ、ロクメに詰め寄る……!


 「あのね、僕はね、ロクメ君の身体のことをね、心配しているの。身体はね、不壊【ふえ】じゃないの」

 「だ、大丈夫だよ。すごく休眠はね、充分だから」

 「やっぱりね、分かってないよ!」

 「ウソなんてさ、ついてないよ。大体さ、ウソなんてついて、俺にさ、どんなメリットがね、あるの」

 「…………(睨)」

 「な、何なの⁉ その目は……」

 「あのね、全く分かってない……」

 「はあっ⁉」

 「えっとね、僕がね、心配しているのはね、ロクメ君の精神なの」

 「せ、精神……気持ちってこと⁉」

 「うん、そのように、捉えてくれてね、すごく結構だよ」

 「…………(真顔)」

 「ねぇ、メンタルケアのためにね、教会にね、通おうよ。僕も、一緒にね、通うから」

 「あのさ、アルヴィッチ君はさ、見たかい⁉ あの刺すような視線……そして、刺すような空気……すごく歪【いびつ】だっただろ⁉」

 「ええ……」

 「当然という空気だ……。弱みを見せると、すごくバカにされるだろう。兄貴がさ、すごく不憫【ふびん】だってさ。こんな、お荷物をさ、背負わされて……」

 「くっ(怒)」


 パアアァァン!

 「えぇっ⁉」

 アルヴィッチ、涙ぐみ……そして、同時に怒りを露【あら】わにしながら、ロクメの頬【ほお】を、すごく激しくビンタをする……。

 ……そして。

 アルヴィッチ、ロクメの胸ぐらを掴【つか】みながら……。

 「ねぇ、僕の気持ちはね、どうなの⁉」

 「ええ……」

 「僕はね、幼なじみとして……そして、友人として……誰より、ロクメ君のことをね、知っている! すごく不器用だけど、すごく頑張り屋さんのところもね」

 「だ、だから……何度もさ、言ってるだろ⁉」

 「世間がね、何なの⁉ その言い訳はね、すごく聞き飽きたよ。大体ね、お兄さんにね、聞いたことはね、あるの」

 「そ、それは……」

 「ロクメ君のね、想像でしょ⁉」

 「う、うん……」

 「もし、ロクメ君のことをね、バカにする者が現れたら、僕がね、すごく喜んでね、立ち塞がってやるよ」

 「アルヴィッチ君……」

 「ごめんね。貴族のことなんて、僕にはね、よく分からない……。でもね、僕はね、貴族だと理解をした上でね、ロクメ君のこと、すごく尊敬をしているの。それだけはね、すごく自信をもってね、言えるよ。誤解があると、すごく困るから、伝えておくね。そのような、重圧に耐えられる……ロクメ君はね、僕にとって、すごく偉大だよ。不満があるなら、僕がね、聞くから! だから、ロクメ君はね、ロクメ君の人生をね、歩んで欲しいの」

 「くうっ……そっか……」

 ロクメ、思わず、目から涙が溢【あふ】れる……。

「こんなのじゃあ、アルヴィッチ君がね、すごく病んじゃうよね。俺はさ……どこまでも……バカ……だよ(涙)」

 そんな、ロクメを抱き締める、アルヴィッチ……。

 「うん、好きなだけ、泣きなよ。僕がね、見守っていてあげるから」


 ……そして、数分後。

 「ま、参ったな……。すごく恥ずかしいところを見せちゃったね」

 「うんうん……そんなことないよ。すごくカッコイイよ」

 「確かに、俺はね、何も、見えていなかったよ。アルヴィッチ君……ホント、ありがとう。すごく嬉しかったよ」

 「いえいえ、どういたしまして。これからはね、辛いことがあったら、一人で悩まないで、僕にね、相談してよね」

 「う、うん……そうだね。できる限り、努力するよ」

 「むううぅぅ……(ジトー)」

 「わ、分かった、分かった(焦)。相談するからさ、勘弁してよ!」

 「ふふっ。ようやく、すごく素直になってくれたよね」

 「ひとまず、考えるところから、始めてみようかな……」

 「うん、すごく賢明な判断だと、僕はね、思うよ」

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