リッタとウィード

第1話

■■リッタとウィード



「おぉ!遂に刃が陽の目を見るときが来たか!

そなたがまさしくこの混沌を切り開く勇者だ!」


高らかにこの国・オスカブルグの王が宣言した。

どよめきと歓声が一体を包む。

青年・ウィードは抜いた剣を見つめていた。


今まで国中の男たちが伝説の剣を抜くために力を込めようと魔法を駆使しようと

剣は一ミリとも動かなかった。


ウィードの掲げた剣は今、この瞬間を100年待ち焦がれていたとばかりにまばゆく光り輝いた。





「ただいまー。」


勇者になったウィードはいろんな手続きをしてヘトヘトになって帰宅した。


手続きとは、オスカブルグの勇者であるという確認書類、身分証明書、旅立つにあたり生活費の受け取り確認書…諸々だ。



「伝説の剣をソファに放るな。おかえり。」


ウィードをたしなめる声が広い部屋の奥の豪奢なデスクから聞こえる。


デスクの上は乱雑に本や書類が重ねられており、そこからひょっこりと声の主は顔の上半分を出した。


紅茶にミルクを混ぜた髪の毛もそれを少し濃くした瞳もとても美しい、ウィードの想い人・リッタだ。


成人になりたてのようなその人は見た目とは裏腹に貫禄があるおじさんのような話し方をする。


リッタは投げたそれが何であるのかもウィードが何をしてきたかも問わない。

なぜならリッタだから。



「放りたくもなるよ。勇者になる手続きをさせられたんだけどさ、十枚以上書類読ませれて書かされて。障害が残ったり死んでも国を訴えませんって同意書まで有るんだ。」


リッタはウィードの向かいのソファまで来るとそこに腰掛けた。



「じゃあ逆に、剣が壊れたら国に損害賠償請求されたりするのか?」


「故意ならね。」


「厭らしい話だ!」


ウィードはケラケラと笑うリッタを見て、疲れた甲斐が有ったなと思う。


そして長いスカートのスリットから組んだ脚が見えて目が離せない。

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