第21話
これを見たのは、食事の前に立ち寄った雑貨屋さんだ。
既に持ってはいるけれど並べたくなる素朴な小人。
見た目以上の価格だから見かけても踏ん切りがつかない代物だ。
『kobitonって今SNS中心に人気なんですよ。私の部屋にも居るんです。黄色と水色。』
『可愛いですね。』
『妹が!妹が最初ピンク持ってて…ハマってしまって。』
『妹がいるんですね。』
『はい。今高3です。松尾くんは?』
あの後、松尾くんが4人兄弟の末っ子だという話になった。
「いつ?いつ買われたんですか?」
「トイレ行った時です。」
「私何も渡せるもの何も…」
「ははっ。俺がもらったらおかしいでしょ。」
対等で在りたいのだ。
それを言おうとしたら、松尾くんが先に口を開いた。
「お礼です。今日、ほんと楽しかった。」
「そしたら私だって。それにお財布一度も出してないんです。だから…」
「たんま!…白状します。」
私の言葉を遮った松尾くんはタンマした手で顔を隠した。
「今日くらいはカッコつけさせてください。それと小人、俺の好きな色にしました。それ見て楽しかったって思い出してくれたらって下心3割…4割?含んでます。」
早口で白状した松尾くんは本当に恥ずかしいらしく、しゃがみ込んだ。通行人が視線を向けてくる。
「糞程キモいな俺。…ほんとヤダ。」
「ちっともキモくなんかないですよ!嬉しいです。」
だから立ってください。私は小さく笑いながら腕をそっと引っ張って立ち上がらせる。
「大事にしますね。」
そう言ったら松尾くんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
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