第32話

地味女の菓子箱を開けて、札の束をひらつかせる。


これ欲しさに罪を犯す奴もリスクしょって借りる奴も居るのに、地味女は後から降りてきた飛田に突き返して走り去ったらしい。



「変な女。」


戻ってきた自分の金をケツのポケットに突っ込んだ。



その夜、俺は護衛を付けずに夜のドンパチ通りを歩いた。



「ツトムさん、遊んでって下さいよ。」

「あぁ。今度な。」


掛けられる声をすり抜けて

ドンパチ通りから一本奥に入る。


辿り着いたのは『コブラ』と書かれた、むさ苦しい飲み屋だ。


店に入っていきなり6人掛けのカウンター。

右手には4人掛けのテーブルが4つ並ぶ。



コブラツイストを得意とするマスターは筋骨隆々の元自衛官だ。

そっちの方の男にはかなりもてるナリをしている。


だけど自分目当ての客はお断りで、色眼鏡で見ようもんなら出禁にされんのが関の山だ。



『バイならどう?』

『す巻きにして放るぞ。』


そんな会話は本気か冗談か。

コソコソ見てるだけの男も居る。

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