第2話

2012年6月15日金曜日



「牧野先輩また大変に成っちゃうかもですね。」


あたしより3歳年下の柏木くんが憂う。



「別にあたしはあたしの仕事をこなすだけよ。」

笑いながら、嘘を吐く。本当は気が重い。



「言ってみたいな。それ。」

少年の様に破顔する彼は、疑う事を知らない。


昼休みはもう終わる。


いつもニコニコとあたしの後を追う可愛い部下に苦笑しながら


「さ、仕事に戻るわよ。」


柏木くんの背中を軽く叩く。



人差し指のネイルの先が剥げていた。




お金が欲しい。男は要らない。

子供は…分からない。



オフィス用品の販売・リース会社。

手ぶらで開業出来るをキャッチコピーに、雑巾1枚からコピー機まで扱う品は数多く


あたしは関東に展開する30店舗のうち、売上上位の支店

その中の新規客を開拓する営業1課勤務。



実のところウチは右肩下がりの業績ではあるけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る