壱.旅立ち〜最初の仲間〜
第1話
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突然、巻き込まれた。
◯
ただの村娘が、と何度も影で言われ続けていた。それでもあの子が立っていられたのはそばにいてくれた人たちがいたからだ。だからこそ、周りの悪意ある言葉にめげず、屈さず、前を向いて立っていた。
そう、それがたとえ、偽りのものだとわかっていたとしても。
『人とは、なぜこうも惨たらしい真似ができる生き物なのだろうな……』
“彼”は、そう小さく呟いて、大きく羽ばたいた。己で、これから、歪められた運命に巻き込まれてしまったあの子を迎えに行くために。
◯
突然のその言葉に、少女はぽかんと呆けてしまう。何がどうしてそうなったのかと問いただしたいけれど、目の前にいるのはいわゆるお偉い様で、自分如きが口答えをしていい相手ではないということは知っていた。
だからこそ、呆けたその顔のまま黙って話を聞いていた。
「――ということで、神託が降りた。そして、それに該当するのはお主のみであったため、こうして迎えにきたというわけである」
「……はぁ……」
「直ちに準備をし、城に来てもらおう」
「え、今からすぐに、ですか?」
「もちろんだ。さ、早く」
そう言って急かされ、困惑しながらもとりあえず独り身で、身軽であることは確かでもあるため、彼女はできるだけ早く行動を起こし身支度をする。と言っても適当に髪を括って、お守りの石を首から下げて仕舞えば終わりだ。整えた簡単な身支度を完了させた事を伝えれば、今までずっと外にいたのか、大勢の人が列をなしているのを見てギョッとする。
まるでお祭りの様な感じになっているのを訝しげに見つめながら、彼女が自分で歩き出そうと一歩足を踏み出したが、それを静止する声が聞こえて来た。
「こちらの籠にお乗りください」
「……自分で歩けますけど……」
「民衆に、あなたが神託を受けた者と理解してもらいたいのです」
「……」
そこまで大袈裟にするのかと、思わなくはないけれど、もともとそんなことは知らない身の上である。言われたことに唯々諾々と従うしか方法はない。こくりと頷いて、彼女は迎えにきた神官の後ろについていく。
豪華絢爛な籠に乗せられ、居心地の悪さを感じさせられつつ、彼女は大人しくしている。
それから、数日間、籠に揺られながら、道行く人に、まるで見せ物のように見られながら、彼女の旅は一旦の終わりを迎え、玉座の間に通される。そこで待ち構えていたのはこの国の女王。
「……ふん、其方のような女に、なぜこのようなことを頼まなければならないのかと思うたが、致し方がない。早う支度をし、さっさと【四神】から紋章を受け取り帰国を命ずる」
「……え」
「見事完遂したらば、お主の願いを一つ叶えてやろう。それでよかろう」
「……」
「さっさとこの薄汚い娘をここから追い出せ。妾は美しいものしか見とうないからの」
そう言って、彼女と女王との面会はあっさりと終わりを迎えた。
なんだか自分勝手な人だなと、内心でムッとしながら彼女は案内された部屋に一日泊まることになり、その次の日には城を追い出されるようにさっさと旅に出ろと追い立てられ、とぼとぼと『中の国』を出たのだった。
テクテクと歩きながら、彼女は最初はどこに行こうかと悩みながら歩いていた。体を覆う外套を被り、森に入っていく。
と。
『見つけたー!』
「?」
『もー、歩くの早くない? 飛んでいたのになかなか見つけられなくて焦ってしまったよ。最初はどこにいくの?』
「……え、どこ? 誰? どこ?」
『あははー、どこって二回言った! おもしろーい!』
「……どうやら幻聴が聞こえているみたいね。早く行こうかな。そんなことよりも今日は野宿になりそうだからいい感じの木の根本を見つけないと。あ、その前に食料調達よね、木の実とかどこかになっていないかしら?」
『ちょちょちょ!? そんな全否定しなくても! そもそも、今君の目の前にいるんだからそんな無視しないで! 悲しい!』
「ああ、ごめんなさい、気づかなかったわ」
『そんな訳ないと思うんだけどっ!?』
「ほら、人って見落とすことが多いじゃない?」
『目の前にいるのに見落としているのはただ無視してるだけだから!!』
「人聞きの悪い。現実逃避よ」
『いないものとして扱う方がなおひどいっ!!』
そう言いながらも彼女の足は止まることなく森の中で安全そうな木の根本を見つけ、いそいそと眠るための準備に入っている。そんな彼女を見て、彼女に話しかけていた“それ”は「強いなこの子……」と内心で思っていた。
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