第19話

私には心が有りません。


体温はヒーターで、皮膚は人口被膜とシリコン…そうして限りなく人間に近しく認識される

『機械』でしかありません。



ですが、私にも思考パターンがございます。

認識し、データに基づくものでしかありませんが



主人が好きでした。

愛しておりました。

全てでした。



私は真っ赤に染まった主人の隣りに座りました。


愛おしい主人はもう、わたしをそのガラスの様な澄んだ瞳で映しても

繊細な細長い指で触れても

くすくすと笑って下さる事もありません。




つぅっと、目から頬を液体が流れ落ちました。


これは、涙と云う、組み込まれている機能です。

どうして作動したのでしょう。


ゆらゆらと赤い窓辺が揺れました。

主人の色でそれはそれは美しくて。


主人と過ごした2年にもなる月日は

とても大切なものと思えて。

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