純粋な愛情

第1話

◆Mrs.Mikami side.


「おはよう、ミハネ。」


主人の柔らかな声に、私は視線をそちらへと向けました。



東側に、大きいとは言えませんが、朝日を賛美する為に存在するような白い木枠の窓。


沿うように置かれた二人用のダイニングセット。

シャビーなテイストにと白い塗装が剥げたデザインのこれは



『ミハネの為なら朝飯前さ。』


そう。此処に越して来た去年に主人が頑張って作って下さったものです。



主人とわたしの朝はいつだって穏やかで、ゆったりと時が刻まれます。



それまで窓外を眺めていたわたしに、主人が笑いかけました。


「またサラリーマンに触発されて職探しを?」


「あなたったら….」


およしになって、とわたしはモーニングコーヒーの準備に立ちます。


「君は僕の傍らに。」

背後から抱き締める人の愉快な囁きは、やはり思い出している様。



以前窓外のサラリーマンを見て、わたしも働くと言い出した事が

主人には驚きだったらしいのです。


確かに社長兼開発者と云う肩書きの主人なら、とるに足らないパートタイムの賃金など不要でしょう。


なれど、こんなわたしとて力になりたいのです。



「良いかい?ミハネ。窓辺から見えるものが全てではないのだよ。」


「そうだけど….」



「君の存在こそが俺の安寧であり幸福だ。これ以上を望んでごらん?神は俺を地獄に叩き落とすだろう。」


「あなたったら、大袈裟だわ!」


からかっているかの様にくすくす笑う主人。

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