第56話

そりゃ、いつかは子どもも……って考えてたよ。



双葉と二人で手を取り合って、そんな幸せな日々を過ごしていけたらいいなと思ってた。



でも、まだまだ先の話だと思ってただけに焦る。



双葉がそう思ってくれるのは、まだずっと未来の話だと思ってたから。




しかし、いいのかよ。お前。


そんなことを親父さんに言って。



お前は知らないだろうけど、親父さんの最近の口ぐせは『孫はまだか?』なんだからな。



今だって顔をよく見てみろ。すげぇ目を輝かせてんぞ。



絶対に本気にしてる。




「おぅ。それなら何も問題はねぇな」


「でしょう。だから少しばかり待ちなさいよ」


「待つ待つ。首を長くして待ってる」




えらく機嫌のいい顔で親父さんは双葉の背中をバシバシと叩いた。




双葉も双葉で自信満々な顔を浮かべて「任せなさい」と返してる。



それを見たジイちゃんが「ほー。これは楽しみだ」とニンマリ笑う。



おい、ジイちゃん。


その“楽しみ”ってのは主に俺が振り回されるって意味でだろ。



ホント、孫には手厳しいわ。


このジイさん。

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